コラム

【2021年版】物流業界の深刻な人手不足の原因と今後すべき対策

現在の日本では、少子高齢化が進んでいます。また、若者が減少しているだけでなく、2005年からは総人口も減少傾向に転じています。
このまま人口減少が進むと、2065年には労働力を担う15~64歳の人口は、2020年と比べて2,600万人も減少するとも言われています。

このような人口減少の背景から、日本では多くの業界で人手不足が深刻化しており、今後ますます拍車がかかることが予想されます。物流・運送業界も同様で、物量は年々増加しているのにもかかわらず、それを運ぶドライバーが減少しています。物流・運送は人々の生活や企業の事業展開にとって、なくてはならないものです。それだけに、ドライバー不足問題の解決は業界全体の急務だと言えるでしょう。

この記事では、物流業界の深刻な人手不足の原因と今後すべき対策を紹介します。

運送業の人手不足の現状

では、物流・運送業界における人手不足の現状を、数字で見ていきましょう。

有効求人倍率

2021年10月の運送業における有効求人倍率は「2.05倍」でした。産業全体での有効求人倍率は1.15倍なので、運送業は全体の平均に比べ、採用の難易度が約1.78倍ということになります。

(厚生労働省 一般職業紹介状況より作成 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22271.html)

入職率と離職率

厚生労働省の調査によると、2020年の運輸業・郵便業におけるの入職率と離職率はそれぞれ、14.5%と13.3%となっています。
全産業の平均の入職率と離職率が、それぞれ13.9%と14.2%ですので、印象ほど離職率が高いというわけではなさそうです。

(https://ashiatohr.com/news/x_hzxh63f2yh/)

人手不足による倒産

帝国データバンクによる「人手不足による倒産」データでは、調査を開始した2013年から2019年の7 年間の件数は「道路貨物運送」が累計 74 件で最多となっています。
このうち、2019 年は 28 件と非常に多く、トラックドライバーを確保できず、受注難から倒産に至るケースが増えていることが分かります。

(https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p200104.pdfより引用)

人手不足の背景

では、物流・運送業界の人手不足の問題がなぜここまで大きな社会問題となっているのか、理由を解説していきます。

「運送・物流業界=悪い労働環境」というイメージ

運送・物流業界は、深夜帯の勤務や肉体労働、長時間勤務という過酷な労働環境にも関わらず、給与は低いというイメージが定着しています。

実際、2017年に行われた「物流業界(陸運・海運・物流)に対するプラス・マイナスイメージ比較」では、「休日・休暇・労働時間」「給与・待遇」「仕事の魅力」などの面で、マイナスのイメージがプラスのイメージを上回っていることが分かっています。

http://www.t-renmei.or.jp/symp/parts/pdf/201710_happyo_03.pdf)

EC需要の増加

インターネットの普及によってネットショッピングやネットオークションといった電子商取引(EC)は増加していることが分かっています。

(https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003.html)

このEC需要の高まりによって、配送業者のドライバーの数は不足しているのも関わらず、仕事量は増え続けています。

人手不足を解決するためにできること

物流業界の人材不足は、わたしたちの生活や経済にも深刻な影響を与えます。
この課題に対して行政や企業がどのような取り組みを行えば良いのかを見ていきます。

労働環境の改善

まずは、労働環境を改善して「運送・物流業界=悪い労働環境」というイメージを払拭することです。

休日・休暇が少ないのではというイメージに対しては、企業ごとに設けている休日規定を採用の際に強調して公開する、ドライバーの休憩室や温泉施設を完備している企業は、劣悪な労働環境というイメージの転化を測り、女性ドライバーの採用にも力を入れるなどといった戦略が有効です。

また、国土交通省では、「ホワイト物流推進運動」と題した取り組みを発表しており、だれもが働きやすい魅力的な職場作りを推奨しています。

「ホワイト物流推進運動」とは、ドライバー不足によって国民生活や経済に与える負の影響を回避し、円滑な物流システムの構築により更なる経済成長を目指していくために立ち上げられました。

近年の物流業界の解説、IT化に成功した事例やドライバー採用の多様性の事例の紹介をオンラインセミナーを通して業界全体に広めていくという内容です。

(https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000237.html)

IT化

業務効率の改善のためにIT化を進めることも必要です。

実例として、トラック積載効率をあげるために、荷積みのシミュレーションをAIに事前に行わせること、輸送ルートや交通情報、ドライバーの稼働人数と位置情報などをAIが総合的に判断して輸送の最適化を図ることなどが行われています。

実際、物流業界のIT化は進んでおらず、必要な物流業務を全て業務効率化できている企業は6.3%との結果が出ています。

(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000087.000012535.html)

求人募集媒体の見直しを

有効求人倍率が高い運送業界では、すでに多くの求人広告が世に出回っており、求職者の目に留まりにくいという課題を抱えています。

求人募集の媒体には、それぞれに見ている求職者の年齢層や求めている雇用形態に違いがあります。

例えば、CMで話題の「indeed」ではさまざまな求人広告をまとめているサイトのため、ドライバー職志望者以外にも多くの人の目に触れますがマッチングの確率も低くなるでしょう。

リクルートが運営する「はたらいく」では、正社員の採用に向いているサイトで、2021年6月時点の全募集職種の21%が「運輸」です。

その他にもドライバーに特化した求人募集媒体は存在するため、不足している人材の雇用形態や年齢層、性別に応じて募集媒体を見直す必要があるでしょう。

まとめ

物流・運送業界は、EC需要による仕事量の増加、IT化の遅れ、マイナスイメージの定着による新規人材の獲得難により、深刻な人手不足の問題を抱えることになりました。

労働環境の改善とITの導入、情報発信による物流・運送業界のマイナスイメージの払拭によって、この大きな課題を解決する必要があるでしょう。

お役立ち資料

DOCUMENT
DOCUMENT