コラム

運送業のドライバー人手不足を外国人実習生が解決?特定技能に運送業が追加!採用のハードルも解説

目次

運送業界は、コロナ禍からネット通販の利用が増えて物流需要が上がったことや、時間外労働時間に関する法改正を受けて、ドライバーの人手不足が深刻化しています。

そのような中、2024年3月に、特定技能の新分野に「自動車運送業」が追加されることが決定しました。

外国人ドライバーを実習生として受け入れることで、労働力不足の解決につながると運送業界で注目が集まっています。

この記事では、外国人技能実習制度の基礎知識から、特定技能に運送業が追加される展望、外国人ドライバーを雇用するメリットや注意点を解説しますので、ぜひ参考にしてください。

運送業の人手不足の現状・背景

物流需要の上昇や2024年問題と呼ばれる法改正に伴って、運送業ドライバーの人手不足が、深刻化しています。

ドライバーの人手不足の原因は、物流需要の上昇と法改正だけではなく、労働環境の厳しさや若年層の入職率の低さ、ドライバーの高齢化など、さまざまな要因が考えられます。

また、賃金に関しても他の産業と比較して1~2割程度低い傾向にあり、労働時間も長時間になりやすく、さらに荷物の積み下ろしといった業務もあるため、体力が必要な仕事です。

そういった労働条件の厳しさに加え、普通自動車免許以外に準中型免許や大型免許を取得する必要もあることから、入職を希望する若者も少なく、活躍するドライバーの高齢化は進み、ドライバーの人手不足は歯止めがきかないのが現状です。

厚生労働省の調査によると、2022年度の全産業の平均入職率は15.2%に対して、運送業の入職率は10.2%と、他の業界と比較してもドライバー職を希望する人が少ないのがわかります。

「2024年問題」や運送業の人手不足について、詳しく解説した以下の記事もあわせてご覧ください。

最近よく聞く『2024年問題』は、運送業界に良い影響を与えている?働くドライバーからの意見を紹介

【2024年版】物流業界の深刻な人手不足の原因と今後すべき対策

外国人ドライバーが注目される理由

2024年4月1日の法改正によって、ドライバーの労働時間が減少するため、それに比例して賃金も減ることが懸念されています。

賃金が減少すると今よりもさらに離職率が高まり、運送できる荷物の量も減ってしまうので、運送会社の利益の低下は避けられません。

そんな中、2024年3月に特定技能の新分野に「自動車運送業」が追加されることが決まり、外国人ドライバーの採用を検討している会社が増えています。

外国人実習生を受け入れることは、ドライバーの人手不足解消が期待できますが、在留資格の取得、語学やサービスの質に関するハードルなどの課題もクリアする必要があるでしょう。

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外国人技能実習制度とは?特定技能との違い

ここでは、「外国人実習生制度」の基礎知識や、技能実習と特定技能の違いについて解説します。

「外国人技能実習制度(技能実習)」は、発展途上国の若者に日本産業の技能や技術、知識を習得する機会を与え、技能実習生が母国に帰った際に、その経験を活かして母国の発展に貢献することを目的として設立された制度です。

技能実習生は最長5年で帰国しなければいけない決まりがあるため、技能実習は永住権の取得ができない在留資格となっています。

特定技能は、外国人を正社員として雇用するために設立された制度なので、派遣として雇用することはできません。

令和3年時点の技能実習生の数は、27万6,123人です。新型コロナウイルスの影響で一時は人数が減りましたが、今後も増加していくことが想定されています。

特定技能と特定実習の違い

特定技能と特定実習は、どちらも在留資格のことを指しますが、制度の目的と在留期間、転職可能かどうかなど、さまざまな違いがあります。

 

制度の種類 施行年 制度の目的 在留期間 転職の可否
特定実習 1993年 日本で技術や語学を学び、母国に伝えることで、開発途上国へ協力する 特定実習1号:1年以内

特定実習2号:2年以内

特定実習3号:2年以内(合計で最長5年)

原則不可
特定技能 2019年 国内での人材確保が難しい業種において、一定の技能を有した外国人を受け入れることで人手不足を解消する 1号:通算5年

2号:上限なし

転職可能

 

技能実習は、1号から3号まであり、技能評価試験に合格することで号数が上がり、3号まで変更すると最長で5年まで在留できます。

特定技能は、通算で5年まで残留期間が延長できますが、2号に移行すれば上限なく残留できます。

特定技能制度が施行されるまでは、特定実習制度しかなく、特定実習の目的が「日本で学んだ技術を母国に伝えること」だったため、実習生は実習期間が満了すると帰国しなければいけませんでした。

しかし、特定技能が新たに施行されてからは、特定実習から特定技能へ切り替えることが可能になり、特定実習制度で日本語や技術を学んだ実習生は、特定技能に切り替えることで、実習での経験を活かして引き続き日本で働けるようになりました。

また、転職に関しても特定実習制度では、労働が目的ではないため転職は原則不可となっており、就業先が変わる場合は「転籍」となります。

しかし、特定技能は就労資格なので、同じ業種であれば転職も可能です。

引用:厚生労働省外国人技能実習制度について

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特定技能「自動車運送業」についての基礎知識

ここでは、特定技能に新たに追加されることになった「自動車運送業」についての基礎知識について解説します。

2024年3月に、特定技能の業種に「自動車運送業」が新たに追加されることが決定しました。自動車運送業とは、運送業のトラックドライバーやバスのドライバーなどが想定されます。

自動車運送業における実習生の受け入れ見込みは、2029年までに最大で2万4,500人とされており、国内で人材確保が難しい運送業の人手不足を解消する期待が高まっています。

しかし、運送業の人手不足は、2029年までで28万8,000人にのぼると想定されているため、外国人実習生を受け入れたとしても、業界の人手不足の解消にはまだ遠いと予測できます。

引用:出入国在留管理局特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針

外国人実習生を受け入れる企業に求められる条件

外国人実習生を自社に受け入れるためには、国土交通省が定める要件を満たさなくてはいけません。ここでは、外国人実習生を受け入れる企業に求められる条件について解説します。

外国人実習生の受け入れ企業に求められるものは、以下の通りです。

  • 国土交通省が管轄する「自動車運送業分野特定技能協議会」の構成員となること。
  • 特定技能所属機関(外国人実習生を受け入れる企業)は、国土交通省やその委託機関が行う調査、指導に対し必要な協力を行うこと。
  • 特定技能所属機関は、道路運送法に規定する自動車運送事業を行う事業者であること。
  • 特定技能所属機関は、一般財団法人日本海事協会が実施する「運転者職場環境良好度認証制度」に基づく認証を受けた事業者、又は全国貨物自動車運送適正化事業実施機関が認定する「安全性優良事業所」であること。
  • タクシー運送業及びバス運送業における特定技能所属機関は、特定技能1号の在留資格で受け入れる予定の外国人に対し、新任運転者研修を実施すること。

上記の基準を満たす事業者であり、協議会の構成員となるなどの条件をクリアすれば、外国人実習生の受け入れが可能となります。

引用:出入国在留管理庁特定技能の運用要領

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外国人実習生を雇用するリスク・注意点

ここでは、外国人実習生を雇用するリスクや、受け入れる際の注意点について解説します。

日本人の従業員と同じ賃金や待遇にする

労働基準法は、外国人労働者にも適用されます。

厚生労働省の調査によると、外国人実習生を受け入れている事業者を対象に立ち入り検査を行った結果、70.8%の事業者に労働基準法違反がみられました。

中には、最低賃金を大幅に下回る時給400円で外国人実習生に残業をさせていた事業者もあったようです。

外国人実習生を受け入れる際は、日本人従業員と同じ賃金や待遇にしなくてはいけません。

※参考:NHKニュース外国人実習生が働く事業所を立ち入り調査 70%で違反を確認 

サービスの質が低下する可能性

日本の運送業のサービスは、他国と比較しても非常に高く、その背景には、日本の文化が影響していると言われます。

そのため、外国人実習生をドライバーとして雇用する際は、海外と日本の運送サービスの違いや、日本の文化についても教えることが大切です。

特に、時間の厳守や日本の交通ルールの順守は、大切な荷物を安全に配送するために最も大切なルールであるため、しっかり研修を行うことが必要です。

免許取得のハードルが高い

運送業のドライバーになるためには、普通自動車運転免許の他に大型免許や二種免許が必要な場合もあるため、外国人実習生がそれらの免許を取得するにはハードルが高いという懸念点があります。

大型免許や二種免許を取得するためには、普通自動車運転免許を取得した上で3年以上の運転歴が必要になります。

そのため、仮に外国人が「留学ビザ」で日本に来ていた場合、留学ビザの滞在期間は最長で4年3ヶ月のため、入国後に免許を取得したとしても、在留期間中に働けるのは1年弱となってしまうのです。

しかし、二種免許が外国語に対応することや、特定技能にドライバー職が追加されることから、免許の取得条件に関しても今後緩和される可能性が高いでしょう。

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外国人ドライバーや運送業の特定技能に関する質問

ここでは、外国人実習生をドライバーとして受け入れる場合や、特定技能に関してよくある質問に回答します。

登録支援機関へ委託する会社が多い?

「登録支援機関」とは出入国管理庁が認定している機関で、事業者からの委託があれば、外国人実習生を受け入れるための支援計画書の作成や、支援業務を行ってくれます。

委託費用はかかりますが、書類作成にかかる労力や、外国人実習生への支援業務を事業者が全て行うのは大変なため、登録支援機関に委託する受け入れ企業は多いです。

「高度人材」として外国人ドライバーを受け入れることは可能?

「高度人材」とは、専門知識や技能を有した外国人実習生を受け入れる制度で、通訳や翻訳の仕事や、介護福祉士、ITエンジニアなどの職種が対象になります。

運送業のドライバーは、専門的な知識や技能が必要な職種とは認められていないため、高度人材としての受け入れはできませんが、トラックの整備エンジニアなどは、今後受け入れ可能になる可能性が高いと言われています。

特定技能の最新情報を要チェック!外国人ドライバーを雇用できる準備をしておこう

運送業のトラックドライバーの人手不足は、今後さらに深刻化すると予測されています。

そんな中、特定技能に「自動車運送業」が追加されたことで、外国人実習生の雇用を検討する運送事業者が増え、人手不足問題が解消されるのではと、期待が高まっています。

しかし、外国人にとって大型免許や二種免許の取得は難しいことが多く、運送事業者が外国人実習生を受け入れるためには、まださまざまなハードルがあります。

外国人実習生の受け入れを検討している運送事業者は、研修や教育制度を整えると共に、賃金や待遇も見直し、雇用したあとの定着率を高めることが大切です。

また、運送業が特定技能に追加されたことは2024年3月に発表されたばかりなので、今後の特定技能に関する最新情報もこまめにチェックしましょう。

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竹村 優

2017年に運送特化求人サイト「ドラピタ」を立ち上げ7年、東海エリアではトップシェアのドライバー求人サイトに成長しました。関東圏、関西圏、九州圏にもっと「ドラピタ」広げていくのはもちろん、運送会社の採用課題を解決する商品をどんどん開発中。今では6つの自社商品を開発し、多くの運送会社様にご利用いただいています。夢は運送業界を「子どもたちの憧れの仕事」にすること。採用から運送業界を変えていけると本気で思っています。
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竹村 優

2017年に運送特化求人サイト「ドラピタ」を立ち上げ7年、東海エリアではトップシェアのドライバー求人サイトに成長しました。関東圏、関西圏、九州圏にもっと「ドラピタ」広げていくのはもちろん、運送会社の採用課題を解決する商品をどんどん開発中。今では6つの自社商品を開発し、多くの運送会社様にご利用いただいています。夢は運送業界を「子どもたちの憧れの仕事」にすること。採用から運送業界を変えていけると本気で思っています。