コラム

フォークリフトの労働災害はなぜ起こる?原因と防止のカギ

目次

「フォークリフトの事故事例を知りたい」
「現場での労働災害を減らすためにどうすればいいのか」

フォークリフトを使う作業現場では、上記のような悩みを抱える方も少なくありません。
フォークリフト作業における死亡事故や重大な労働災害は、適切な知識と対策があれば防げます。

この記事では、最新の統計データと実際の事故事例をもとに、フォークリフトの事故の発生状況や具体的な事例を紹介しながら、事故の原因と防止策を詳しく解説します。

現場で実践できる安全対策を知ることで、事故を未然に防ぎ、安心して作業できる環境をつくる手助けとなるはずです。フォークリフトの事故リスクを減らし、安全な職場づくりを目指したい方は、ぜひ最後までお読みください。

フォークリフトによる労働災害の現状

フォークリフトによる事故を防ぐためには、労働災害の現状を知っておくことが大切です。この章では、フォークリフトによる労働災害による死亡事故と、死傷災害の発生状況を解説します。

労働災害による死亡事故の発生状況

フォークリフトは、工場や倉庫などで物を運ぶのにとても便利な機械ですが、残念ながら、使い方を間違えると大きな事故につながることがあります。特に、労働災害による死亡事故も後を絶ちません。

厚生労働省の発表によると、建設業や製造業など、様々な業種で労働災害は発生していますが、その中でもフォークリフトが関わる事故も決して少なくありません。

例えば、厚生労働省が公表している労働災害の統計を見てみると、フォークリフトが関わる死亡事故件数は令和5年で22件となっています。

これらの事故を防ぐためには、フォークリフトを運転する人がしっかりと安全ルールを守ることや、フォークリフト自体の点検をきちんと行うことがとても大切です。

フォークリフトの労働災害発生状況

フォークリフトが原因となる労働災害は、死亡事故にも負傷してしまう事故も多く発生しています。厚生労働省の統計によると、フォークリフトが関わる労働災害は、令和5年で1,989件も報告されています。

荷役を運搬する機械による労働災害では、フォークリフトが70%で1位と大きな割合を占めているのが現状です。

具体的に事故が起きやすい例としては、荷物を高く積みすぎてバランスを崩し、フォークリフトが転倒してしまうケースなどが挙げられます。

また、狭い場所でフォークリフトを操作していて、周りの人にぶつかってしまう事故や、フォークリフトから誤って落ちてしまう事故なども報告されています。

さらに、フォークリフトで運んでいる荷物が落下してきて、作業員が怪我をしてしまうという事故も起こっています。これらの事故は、ちょっとした不注意や、安全確認を怠ったことが原因となることが多いです。

フォークリフトは便利な機械ですが、一歩間違えると大きな事故につながる可能性があることをしっかりと理解しておく必要があります。日頃から安全な使い方を心がけ、事故を未然に防ぐための対策を講じることが重要です。

フォークリフトの事故事例

具体的なフォークリフトによる事故事例は、自社の事故防止に役立ちます。この章では、フォークリフトの転落・墜落事故に関する事例を「職場のあんぜんサイト 労働災害事例」から抜粋してご紹介します。

転落・墜落による事故

転落・墜落による事故事例は下記のとおりです。

【事例1:工場内におけるフォークリフトの転倒】

〇発生状況
工場内にて、荷物なしでフォークリフトを運転し、坂道を下っていた際、坂道の先に大型トラックが停まっていたため、ハンドルをきったところ、ハンドルを切りすぎてしまい、勢い余ってフォークリフトが転倒し、骨折した。

〇原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられます。

  1. フォークリフトを運転する際、坂道では特に注意し、速度を抑え慎重に運転するように労働者に徹底されていなかった
  2. 工場内の坂道を走行する他車両の妨げにならないように、車両の停車位置を安全な場所に設けていなかった
  3. フォークリフトを安全に運転できるように、運転講習が定期的に設けられていなかった

【事例2:転倒したフォークリフトのヘッドガードの下敷きになり死亡】

〇発生状況
事業場の構内で、転倒したフォークリフトのヘッドガードに胸部を挟まれた作業員が死亡しているのが発見された。朝礼前で目撃者はいませんが、状況から、傾斜地でフォークリフトの方向転換中にバランスを崩して転倒し、運転席から投げ出された作業員が下敷きになったと推定される。

〇原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられます。

  1. 作業場所(傾斜地)に応じた作業計画がなかった
  2. 傾斜地での方向転換に誘導者がいなかった
  3. フォークリフト作業の危険性評価と周知(リスクアセスメント)が未実施だった
  4. 労働者のフォークリフト運転技能と安全教育が不十分だった

【事例3:フォークリフトのパレット上で作業中に墜落し死亡】

〇発生状況
ひさし取り付け工事の準備中、作業責任者がフォークリフトのフォークにパレットを乗せ、その上で作業員に高所の鳩よけネット撤去作業をさせたところ、作業員が墜落し死亡しました。

〇原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられます。

  1. 作業計画がなかった
  2. 不安定なフォークリフトを安全な作業床で行わなかった
  3. 作業員への安全衛生教育が未実施だった

挟まれ・巻き込まれによる事故

【事例1:プレス機との間に挟まれ死亡】

〇発生状況
被災者が一人で4工程のプレス作業を行い、金型交換時にフォークリフトで持ち上げた約270kgの金型の下で作業中、エンジンを切らず前進1速・サイドブレーキをかけたフォークリフトが動き出し、プレス機との間に挟まれ死亡した。

〇原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられます。

  1. 運転者が離れる際にエンジンを切らずフォークを下げなかった
  2. フォークを上げたまま金型清掃させていた
  3. 月次点検でクラッチの異常(摩耗による逸走)を確認できていなかった

【事例2:後退してきたフォークリフトとトラックの間に挟まれて死亡】

〇発生状況
雨天時、屋内作業場で被災者がトラックへ荷積みを行うため、荷台の扉を開けていた。近くでフォークリフトによる荷物移動を行っていた作業者は、被災者のトラックを視認したものの、人の姿は見えなかったためフォークリフトを後退させた。トラックの荷台の側にいた被災者はフォークリフトとトラックの間に挟まれて死亡した。フォークリフトの誘導員は配置されていなかった。

〇原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられます。

  1. 誘導員が未配置だった
  2. 作業計画に不備があった
  3. 作業者間の連携が不足していた
  4. 狭い作業場での危険性の認識が不足していた
  5. 安全衛生委員会での対策に向けた検討が不足していた

作業者への激突事故

【事例1:フォークリフトが後進中のトラクター・ショベルに激突され死亡】

〇発生状況
断熱材工場で、フォークリフトが廃棄物運搬中、後退してきたトラクター・ショベルと衝突し横転。フォークリフト運転者はシートベルトを未着用で、ヘッドガードと地面に挟まれ死亡。

〇原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられます。

  1. トラクター・ショベル作業時の立入禁止措置に不備があった
  2. 無線連絡が不徹底だった
  3. 廃棄物によって作業場が狭くなっていた
  4. フォークリフトの運転手がシートベルト着用していなかった
  5. トラクター・ショベルには警報装置がなく、事前の無線連絡も行われていなかった

【事例2:フォークリフトで運搬作業中に作業者に激突し死亡させた】

〇発生状況
印刷工場で、製本された本をフォークリフトでバック走行運搬中、運転者が進路上のパトロール中の被災者に気付かず轢過、死亡した。運転者は1トン以上のフォークリフト運転に必要な技能講習を修了していなかった。

〇原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられます。

  1. 無資格者への運転業務指示をしていた
  2. バック走行時の後方確認が不十分であった
  3. フォークリフト走行路の横断通路が未設定であった
  4. 作業者への教育が不足していた

転倒事故

【事例1:フォークリフト上の荷台が傾き転落してラックの下敷きになり死亡】

〇発生状況
養鶏場の2階から育成鶏を搬出中、被災者はフォークリフトで支えた横幅の広い荷台にラックを載せた際、偏荷重で荷台が傾き約2m下の地面に墜落。落下したラックが跳ね返り被災者の上に落ち死亡。

〇原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられます。

  1. 出荷口より広い荷台を床に置かなかった
  2. 偏荷重で積載してしまった
  3. フォークのみで支えた荷台への搭乗を禁止していなかった
  4. フォークリフトの状態確認が不足していた

【事例2:けん引によりエンジンを掛けようとしたフォークリフトが転倒】

〇発生状況
卸売業者の事業所で、配送準備中にフォークリフトのエンジンが故障。同僚2名がトラックで牽引始動を試みた際、急なエンジンブレーキによりフォークリフトが横転し、運転者が放り出される事故が発生した。

〇原因
この災害の原因としては、次のようなことが考えられます。

  1. けん引によりエンジンが始動した際、急激なエンジンブレーキが働いた
  2. フォークリフトの故障(エンジンが始動しないこと)の原因を調べ、必要な補修をしなかった
  3. フォークリフトの検査、点検等の管理が適正に行われていなかった

フォークリフトの事故原因

多くの事故は「経験による慢心・油断」が原因で起こりやすくなります。フォークリフトの事故原因として多いものは下記のとおりです。

  • 安全確認や法令順守の怠り
  • 運転操作ミス
  • フォークリフトの整備や点検不足
  • 危険なパレットの積み方

事故原因の詳しい内容を見ていきましょう。

慣れによる安全確認や法令順守の怠り

フォークリフトの事故は、ちょっとした油断や「まあ、大丈夫だろう」という気持ちから起こることがあります。特に、作業前の安全確認をきちんと行わなかったり、フォークリフトの運転に関するルール(法令)を守らなかったりすることが、事故につながる大きな原因の一つです。

例えば、フォークリフトを運転する前には、ブレーキやライト、タイヤなどの状態をチェックすることが義務付けられています。しかし、これを怠ると、走行中にブレーキが効かなくなったり、暗い場所で人に気づかれずに接触してしまったりする可能性があります。

このように、安全確認をしっかり行い、法律や職場のルールを守ることは、フォークリフトの事故を防ぐためにとても大切なのです。一人ひとりが安全意識を高め、ルールを守って作業を行うことが、労働災害の防止につながります。

運転操作ミス

フォークリフトの事故原因として、最も多いのが運転操作ミスです。フォークリフトによる労働災害の原因の多くは「運転者の不安全な行動」によるものです。具体的には、急発進や急停止、スピードの出しすぎ、不安定な場所での操作などが挙げられます。

例えば、狭い場所での旋回時に、後輪が歩行者に接触してしまう事故や、荷物を高く上げた状態で急ブレーキをかけたために、荷物が崩れて落下する事故などが実際に発生しているようです。

また、操作レバーの誤操作によって、意図しない方向にフォークが動いてしまい、周囲の人や物にぶつかるケースもあります。これらの運転操作ミスは、運転者の経験不足や不注意、焦りなどが原因となることが多いと考えられるでしょう。

フォークリフトの整備や点検不足

フォークリフトは、工場や倉庫などで重い荷物を運ぶのにとても便利な機械ですが、日々の点検や定期的な整備を怠ると、思わぬ事故につながることがあります。

フォークリフトの場合、ブレーキの効きが悪くなったり、タイヤが摩耗していたりすると、急な停止や旋回時にバランスを崩しやすくなり、転倒や荷物の落下といった事故につながる可能性があります。

これらの事故を防ぐためには、作業前の始業点検を確実に行い、ブレーキ、タイヤ、油漏れ、異音などをチェックすることが重要です。

危険なパレットの積み方

フォークリフトを使って荷物を運ぶ際に、パレットへの積み方が悪いと、荷物が崩れて落ちてきたり、フォークリフトのバランスが崩れて転倒したりする、とても危険な事故につながることがあります。

このような事故を防ぐためには、下記の基本的なルールを守ることが重要です。

  • 重い荷物はできるだけ下の方に積む
  • 荷物がパレットからはみ出さないようにする
  • 荷物の重心がパレットの中央になるように積む
  • 不安定な荷物はロープやバンドで固定する

焦らず、丁寧に、正しい積み方を心がけましょう。

フォークリフトの事故防止対策

フォークリフトによる事故防止に効果的な対策は下記のとおりです。

  • フォークリフト専用の通路設置
  • 指差し確認・指差し呼称の徹底
  • 点検と整備の重要性
  • 安全運転と安全な積み方の徹底
  • 危険予知トレーニングの実施

それぞれの対策を詳しく見ていきましょう。

フォークリフト専用の通路設置

フォークリフトの事故を防ぐための対策として、作業を行う場所にフォークリフト専用の通路を設けることはとても効果的です。フォークリフトと作業員が同じ場所を通行することによる接触事故を防ぐための重要な対策といえます。

専用通路を設置する際には、通路の幅をフォークリフトが安全に通行できる十分な広さを確保することが大切です。また、通路には見やすいように白線などを引き、歩行者用の通路との区別を明確にすることが望ましいでしょう。

さらに、通路が交差する場所には、注意喚起のための表示やミラーを設置するなどの工夫も有効です。

指差し確認・指差し呼称の徹底

フォークリフトの事故を防ぐための基本的な対策として、作業を行う前や移動する際などに、指で示す「指差し確認」と声に出して確認する「指差し呼称」を徹底することが非常に重要です。

人間の行動には、どうしても見間違いや思い込みといったエラーが起こり得ます。意識的に指差しと声出しを行うことで、注意喚起を促し、安全確認の質を高めることができるでしょう。

定期的な点検と整備

フォークリフトの事故を防ぐためには、日々の点検と定期的な整備が非常に大切です。どんな機械も使い続けるうちに、ネジが緩んだり、油が漏れたり、部品が劣化したりするからです。

これらの不具合を放置しておくと、突然故障して大きな事故につながる可能性があります。また、フォークリフトは、一年に一度の特定自主検査が義務づけされており、それを怠ると罰則が科せられます。

点検と整備をしっかりと行うことは、フォークリフトを使う人自身の安全を守るだけでなく、周りの作業員の安全を守ることにもつながります。日々の小さな確認と、定期的なメンテナンスを忘れずに行いましょう。

安全運転と安全な積み方の徹底

フォークリフトの事故を防ぐために最も重要なことの一つは、安全な運転を心がけることと、荷物を安全に積む方法を徹底することです。

何気ない油断や慢心が、大きな事故につながります。作業場所の状況を常に確認し、少しの距離でも細心の注意を払って作業を進めましょう。これらの安全運転と安全な積み方を一人ひとりがしっかりと守ることで、フォークリフトによる労働災害を大幅に減らすことができるはずです。

危険予知トレーニングの実施

フォークリフトの事故を未然に防ぐための効果的な方法の一つに、危険予知トレーニング(KYT)を実施することが挙げられます。

危険予知トレーニングは、特別な道具や難しい知識は必要ありません。作業前に少し時間を取って、みんなで話し合うだけで始めることができます。日々の作業に取り入れることで、より安全な職場環境を作ることができるでしょう。

フォークリフト事故時の対応

この章では、万が一、自社の現場でフォークリフトによる事故が起こってしまった場合の対応について解説します。

事故発生時の初動対応

フォークリフトの事故が発生してしまった場合、迅速かつ適切な初動対応が、被害を最小限に抑えるために非常に重要になります。

労働災害が発生した場合の基本的な対応として、まずは負傷者の救護が最優先です。怪我をした人がいる場合は、すぐに安全な場所に移動させ、応急処置を行う必要があります。必要であれば、救急車を呼ぶなどの手配を迅速に行いましょう。

次に、二次的な災害を防ぐために、さらなる事故につながる危険がないか確認し、必要に応じた措置を取ります。その後、速やかに会社や上司に事故の状況を報告しましょう。

労働安全衛生法に基づき、事業者は労働災害が発生した場合、その状況を遅滞なく労働基準監督署に報告することが義務付けられています。会社や上司の指示に従い、必要な手続きを進めましょう。

労災給付・賠償金について

フォークリフトの事故により労働者が怪我をしたり、病気になったり、亡くなってしまった場合、労働者やその遺族は、労働者災害補償保険(労災保険)から給付を受けることができます。

また、会社の安全配慮義務違反が認められる場合には、会社に対して損害賠償を請求できる可能性もあります。

労災保険の給付や会社への損害賠償請求の手続きは複雑で、専門的な知識が必要となる場合があるでしょう。そのため、もし、事故が発生してしまった場合には、まずは会社や労働組合に相談し、必要に応じて弁護士などの専門家に相談することも検討する必要があります。

フォークリフトの労働災害を防止するためにはルールを決めて徹底することが大切

本記事では、フォークリフト労働災害の現状や原因、具体的な事故事例、そして防止策について解説しました。

運転ミスや整備不足、危険な作業習慣を改善するため、専用通路の設置や指差し確認、定期点検、危険予知トレーニングなど具体的対策が必要です。

これらの知識を現場に活かし、安全意識の向上と事故防止にお役立てください。

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