コラム

運送業界のコンプライアンスとは?法令遵守のポイントと違反になる事例を解説

目次

運送業界で法律や倫理を守る意識が低い企業は、顧客からの信頼を失い、事業継続が危ぶまれる可能性があります。

そうしたリスクを避けるためには、コンプライアンスの徹底が欠かせません。

本記事では、運送業界が注力すべき法令遵守のポイントや違反事例を解説します。

ドライバー不足に悩む企業も、法と企業倫理を正しく理解し遵守することで、信頼できる企業と見てもらえ、人材確保に役立ちます。

コンプライアンスを徹底し、安全で安定した経営を目指しましょう。

コンプライアンスと企業倫理

コンプライアンスに取り組む際は、法令を守るだけでなく、社内独自の規則や社会全体の倫理観を踏まえることが重要です。

まずは、コンプライアンスの意味と企業倫理を解説します。

コンプライアンスとは?

コンプライアンスとは、企業や組織が法令や規則、社会的な倫理観を守りながら公正で適正な事業運営を行うことです。

単に法律を守ればよいという意味ではありません。

社会的責任(CSR)を果たし、企業の信頼性や透明性を高める姿勢が求められます。

運送業では、人や物資の輸送が中心なので、安全運行や労働環境の適正管理が大切です。

コンプライアンスに違反すると、行政処分や社会的評価の低下につながる可能性があります。

特に勤務時間超過や整備不良が原因で事故が起こった場合、人命にかかわる深刻な事態に発展するおそれがあります。

こういった事態を未然に防ぐためにも、企業全体でコンプライアンス意識を根付かせる取り組みが欠かせません。

コンプライアンスと企業倫理

コンプライアンスは法令遵守だけでなく、企業倫理に基づいた以下の3つの階層があります。

  1. 法令遵守
  2. 社内規則の遵守
  3. 倫理的な行動

 

1つ目は労働契約法や道路運送法、会計基準などの法令遵守です。
事業者としての責務を果たさないと、行政処分を招くリスクが高まります。

2つ目は労働管理や個人情報の取り扱いなど、社内ルールを守ることです。
企業独自の規定を徹底する姿勢が組織の秩序を安定させます。

3つ目は倫理観に基づく行動です。
法律や規則に明文化されていないケースでも、人として正しい判断を行う姿勢が、企業イメージの向上や不祥事の予防に効果的です。

こうした多層的なコンプライアンスと企業倫理の理解が、安全かつ信頼される経営基盤を育みます。

運送業界でコンプライアンス違反になりやすい事例

運送業界では、以下のようなコンプライアンス違反に注意が必要です。

  • 従業員の労働問題
  • 顧客の情報漏洩
  • 不正経理

具体的にどういう違反事例があるか、それぞれ解説します。

従業員の労働問題

従業員に関する労働問題には、長時間労働やハラスメント問題などがあります。

特に過労死ラインを超える残業は社会的にも注目されており、深刻な事態に発展すると企業の信用を大きく損ないかねません。

また、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなどの行為が常態化すると、社内環境が悪化し、優秀な人材の離職リスクが高まります。

運送業は厳しい納期や夜間運行などが絡むため、従業員一人ひとりの勤務実態を把握するのが簡単ではありません。

表面化しにくい運行上の問題を放置するとコンプライアンス違反と判断される危険があります。

労働時間の管理や研修制度の整備など、根本的な改革が必要になります。

経営者や管理部門が現場の実情を把握し、個別相談やアンケートなどを通じて従業員の声を集めましょう。

顧客の情報漏洩

運送業では、配送先の住所や氏名、取引先との契約情報など機密性の高いデータを扱います。

情報保護が不十分だと、データ紛失や盗難、システムへの不正アクセスなどの情報漏洩が生じるリスクがあります。

顧客情報が外部へ流出すると、利用者だけでなく委託元の企業にも被害が及び、信頼関係の破綻を招きかねません。

場合によっては、賠償金や違約金の支払いのほか、行政処分の可能性も高まります。

適切なアクセス権限の設定や通信の暗号化、社内端末やスマートフォンの取り扱いルールの徹底など、具体的な管理体制を整える必要があります。

また、契約書や配送伝票など紙ベースの資料も厳重に保管し、デジタルデータ移行時の処分ルールを定めましょう。

情報を守る姿勢は企業の信頼性を大きく左右するため、他社との差別化ポイントになる可能性もあります。

不正経理

不正経理は、経費の水増しや架空請求、横領、粉飾決算などさまざまな形で起こります。

運送業界は、車両維持費や燃料費、人件費など出入りが多い分、不正が見えにくい構造です。

もし不正経理が発覚すれば、契約打ち切りや信用失墜のみならず、刑事罰にまで発展するリスクもあり、事業継続が困難になるおそれがあります。

組織的な不正を防ぐには、内部統制を強化し、複数人が資金の流れをチェックする体制を整える方法が効果的です。

管理体制を整備して定期的に監査を行うことで信頼性の高い経営ができ、顧客や取引先からの評価も向上します。

運送業界のコンプライアンスで大切なポイント

運送業界のコンプライアンスでは、以下のポイントを押さえることが大切です。

  • 運賃・料金を適切に設定する
  • 労働時間の管理を徹底する
  • 安全管理を徹底する
  • 従業員にコンプライアンス教育をする
  • 下請法を遵守する

安定した経営を続けるために、それぞれのポイントを解説します。

運賃・料金や運送計画を適切に設定する

運送業が運送約款の変更や新サービスの料金設定を独断で進めると、法令違反と判断される場合があります。

事前に所轄の行政機関へ届出を行い、承認を得る手順を省略しないようにしましょう。

その際、最大積載量や運行距離を踏まえた公正な価格設定が求められます。

過積載は重大な交通事故を引き起こす原因になり得るので、配車計画や日報管理などを活用して常に安全運行を確保しましょう。

過積載防止の取り組みが不十分だと、運転者の負担増や車両損傷につながるおそれがあります。

収益確保と安全性を両立するためにも、運賃や料金は法令や業務内容を踏まえて適切に算出しましょう。

労働時間の管理を徹底する

ドライバーの勤務状況をきちんと把握するのは、運行の安全確保と従業員の健康管理にとって欠かせません。

慢性的な残業や不十分な休憩が続くと、ドライバーの疲労やストレスが蓄積し、事故や違反のリスクが高まります。

ドライバーの労働時間を正確に記録する仕組みと、それを確認する管理者が必要です。

デジタルタコグラフなどの運行記録計を活用し、走行距離や速度、休憩時間などを記録しましょう。

さらに、休日や有給休暇の取得状況を可視化して、従業員に適切な休息がとれているかも確認します。

ドライバーが健康を維持しながら働ける環境を整備すれば、定着率の向上や採用面でのメリットにもつながります。

管理者が単に数字をチェックするだけでなく、コミュニケーションを通じて実際の疲労度や業務負荷を把握し、働きやすい職場を作りましょう。

安全管理を徹底する

運送業界では車両の整備状態や運行計画の管理があまくなると、事故発生率が高まります。

安全管理体制を強化するためには、自動車車庫の維持状況や配置車両の種別、車体表示などを正しく管理し、必要書類を常に最新の状態で保管しましょう。

運行管理者を適切に選任して届出を行い、運行管理規程の策定と日々の運用を徹底すると、安全意識が社内に根付きます。

ドライバーの出発前後の点呼は特に重要で、合わせてアルコール検知器の使用や定期点検の記録管理を厳格に実施することが安全管理につながります。

さらに、車両の整備面ではタイヤの摩耗やブレーキの異常、エンジンオイルの交換時期などを見逃さないよう計画的に点検を行いましょう。

安全管理を強化すればするほど企業イメージは向上し、顧客や取引先からの信頼獲得にもつながります。

従業員にコンプライアンス教育をする

コンプライアンス教育は、全従業員が法令や社内規則、企業倫理をしっかり理解するうえで欠かせません。

運転者には安全運転や整備点検などの基本事項だけでなく、交通ルールを逸脱しない意識づけが必要です。

新人や事故歴のある運転者に対する特別指導を定期的に実施し、過去の事例やヒヤリハット報告を共有すると、不注意や違反行為を未然に防ぎやすくなります。

適性診断の受診歴や健康診断結果なども合わせて管理し、安全運行に問題がないか確認しましょう。

教育内容は座学だけで終わらせず、シミュレーションを取り入れると効果的です。

加えて、事故や違反が起きた際に迅速に報告する仕組みを整え、改善策を全従業員に共有する体制を築くと、組織全体のリスクマネジメント力が向上します。

こうしたコンプライアンス教育の積み重ねが、企業全体の法令遵守と安全管理につながり、従業員を守ることにもつながります。

下請法を遵守する

下請法は、親事業者と下請事業者の取引を適正化する目的で定められています。

運送業では、一部の業務を下請事業者へ委託するケースが多いため、契約書や経費明細書の管理が求められます。

下請法違反は、取引先との関係が悪化するだけでなく、信用低下や行政処分に発展するリスクがあるため注意が必要です。

下請法の詳しい内容は、以下の記事で詳細に解説しています。

内部リンク「運送業者 下請法」

運送業界にコンプライアンスが必要な理由

運送業者がコンプライアンスを徹底すると、以下のようなリスク回避ができます。

  • 行政処分を受けるリスクを防ぐ
  • 企業のイメージダウンを防ぐ
  • 社会的責任を果たすため

なぜコンプライアンスが運送業者に不可欠なのか、それぞれの理由を解説します。

行政処分を受けるリスクを防ぐため

コンプライアンス違反が見つかると、運送事業許可の取り消しや業務停止、業務改善命令などの行政処分を受ける場合があります。

こうした行政処分は、銀行や取引先からの信用を急激に低下させるおそれがあるため、注意が必要です。

運送業では運行管理者の義務違反や過積載、違法残業などが問題視されやすく、行政側のチェックも年々厳しくなっています。

例えば、重大な事故を起こした際に「過去に何度も同じ問題を指摘されていたが、改善されていない」などと認定されると、厳しい処分が科される可能性が高くなります。

定期的に社内で監査を行い、法令や社内規則に抵触する行為がないかを洗い出しましょう。

企業のイメージダウンを防ぐため

コンプライアンス違反が明るみになると、メディアによって報道される確率が高まります。

大々的に報じられると、顧客や地域住民、取引先にネガティブな印象を与え、企業イメージを一気に損なうリスクがあります。

企業にとって信頼は時間をかけて築き上げるものですが、失墜するのは一瞬です。

運送業は荷主企業から依頼された荷物を扱う事業になるため、不正や違反が疑われる企業には荷物を任せられないと判断されてしまいます。

その結果、取引停止や新規顧客獲得の難航など、経営全体に影響が及ぶかもしれません。

また、評判が悪化すれば既存の従業員も不安を感じ、離職率が上がるリスクも高まります。

社内外でネガティブな連鎖反応を生まないために、普段からコンプライアンスを徹底し、万一の不祥事時も迅速かつ誠意ある対応を行う必要があります。

社会的責任を果たすため

企業は利益追求だけでなく、社会全体の持続的発展に貢献する責任があります

運送業者は物流インフラとして地域経済や生活を支える立場にあるため、法令遵守や安全運行などの社会的責任を怠ると、地域社会にも大きな損失をもたらします。

例えば、ドライバー不足が深刻化しているなかで労働環境を軽視すると、さらに人材が離れ、サービス水準が低下して地域の物流が滞りかねません。

企業が社会的責任を果たすと、顧客や取引先だけでなく、地域住民や行政機関から信頼を得やすくなります。

結果として、優秀な人材や新しいビジネスチャンスが集まる好循環が生まれるでしょう。

単なる「良いことをしている」というイメージ戦略だけでなく、リスクマネジメントの観点からも非常に有効であり、企業が長期的に安定した経営を行うための基盤となります。

運送業界のコンプライアンスは従業員と会社を守るために必要

運送業界は多くの人命や荷物を預かる責任を担い、社会や経済のあらゆる分野を支えています。

コンプライアンスを守りながら業務を進める姿勢は、従業員の安全や健康を守るだけでなく、企業全体の信頼を高めるうえでも欠かせません。

ドライバー不足に悩んでいる企業こそ、労働環境を改善し、法令遵守を徹底する取り組みに力を注ぎましょう。

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業界特有のニーズを理解し、必要な人材をマッチングしやすい仕組みを備えています。

コンプライアンスを守りながら健全に経営する姿勢を示し、人材不足の解消と企業価値の向上を同時に実現しましょう。

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代田 晴久

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代田 晴久

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