コラム

ドライバーの健康診断や管理の重要性とは|事業者の義務も解説

目次

運送事業を行う会社では、働き手であるドライバーの存在は必要不可欠です。ドライバーが病気になってしまえば業務が滞ることはもちろん、事故を起こせば会社として責任を取ることになってしまうでしょう。そのため、事業者は安全かつ円滑な業務のために、ドライバーの健康を確保しなければいけません。

特に健康管理のうち、健康診断については法律上の義務もあります。

今回はドライバーの健康診断の義務と意義、また健康管理についてを解説します。ドライバーを守るための普段の健康管理のポイントも紹介するので、担当者の方はぜひ参考にしてください。

ドライバーの健康管理をする義務と重要性

運送事業では車を使用した業務が主です。しかし、車は一歩間違えれば、ドライバー自身や他の人の命を奪いかねない乗り物と言えます。

特にトラック運転手やバス運転手などは、長距離・長時間の勤務になりやすく、体調不良などで事故を起こしてしまうリスクがあります。

そこで健康診断はドライバーの不調に気がつくために、重要な役割を担っています。健康診断の義務は労働安全衛生法・第66条において次のように明記されており、企業として滞りなく行わなければいけません。

第六十六条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

※引用:e-Gov法例検索「労働安全衛生法 第六十六条(健康診断)

また、ドライバーの健康問題のリスクを考えると、普段から事業者が率先して健康管理を行い、疾患を招かないようにすることも大切です。

運送ドライバーが起こしやすい健康トラブルって?

運送ドライバーは、脳・心臓・血管系の病気にかかる人が多いと言われています。ドライバーは長時間座り、仕事をすることや、勤務形態から偏った食事になりやすい傾向があり、慢性的な高血圧や動脈硬化、血行不良などを起こしやすいと見られています。

また、昼夜不規則な勤務があるために体内バランスも崩れやすいです。睡眠不足が蓄積し、疲れがうまく取れないといったことも多々あります。

それらの積み重ねから病気を発症し、最悪の場合は業務中に突然の体調不良で事故につながることもあります。運送業においては、事故を未然に防ぐためにドライバーの健康管理は手を抜くことができない問題です。

※参考:厚生労働省「令和4年度 事業用自動車健康起因事故対策協議会資料

健康トラブルを起因とした事故の発生率

厚生労働省による調査によると、平成25年~令和3年の間で健康を起因とする事故を起こした人は2,465人いたことがわかっています。そのうち、事故の原因とされた病気は次の通りです。

健康起因事故を起こした運転者の疾病別内訳

さらに事故を起こしてしまったドライバーの2,465人のうち、死亡したドライバーは426人です。

死亡原因は心臓疾患(心筋梗塞、心不全等)が55%、脳疾患(くも膜下出血、脳内出血等)が12%、大動脈瘤及び解離が12%とわかっています。

つまり健康トラブルを起因として2割近いドライバーが亡くなっていることになります。死亡率を考えると、ドライバーが健康を損なうことは死活問題と言えるでしょう。

 

※参考:厚生労働省「令和4年度 事業用自動車健康起因事故対策協議会資料

ドライバーに健康診断を受けさせるタイミング

ドライバーに健康診断を受けさせるタイミングは、労働安全規則において決まっています。事業者は雇用した従業員に対し、雇い入れの時と1年1回定期健診を行うのが義務です。

ただし、特定業務従事者にあたる従業員に対しては、半年に一回定期健診を行わなければいけません。特定業務従事者とは、危険な物質や一定以上の室温の環境、深夜帯の業務など、過酷な環境下での業務を行う人を指します。

なお、運送業で特定業務従事者にあたるのは、午後10時以降から午前5時の間の勤務が週に1回以上または1ヶ月に4回以上行う労働者です。早朝・深夜の勤務があるドライバーは、場合によっては特定業務従事者として認定されることになります。

条件が一致するドライバーには、半年に1回の健診を実施するようにしましょう。

※参考:e-Gov法例検索「労働安全規則 第四十三条・第四十四条・第四十五条

※参考:全日本トラック協会「トラック運送業者のための健康起因事故防止マニュアル

ドライバーの健康診断の項目

ドライバーが受ける健康診断の項目は一般的な会社で行われるものと同じです。主に次の11項目において検査を受けます。

① 既往歴及び業務歴の調査

② 自覚症状及び他覚症状の有無の検査

③ 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査

④ 胸部エックス線検査及び喀痰検査

⑤ 血圧の測定

⑥ 貧血検査(血色素量、赤血球数)

⑦ 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)

⑧ 血中脂質検査(LDL・HDLコレステロール、TG)

⑨ 血糖検査

⑩ 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)

⑪ 心電図検査

注)④について、雇入れ時健康診断においては、胸部エックス線検査のみとなっている。

※引用:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断関係資料

もし健康診断でドライバーの不調が見つかったら

定期健診後に要注意の値や不調が見つかったら、ドライバーに再検診や治療を勧めることも事業者側の義務です。なかでも脳・心臓疾患の所見が見られた場合は、二次健康診断を受けてもらう必要があります。対象者は所定の病院にて再度診断・検査を受けさせましょう。

その後、本格的に病気が確定した場合は、ドライバーの病状にあわせて勤務形態の変更、もしくは休業の検討をおこないます。なお、乗務可能か否かは、会社と産業医、ドライバー本人と主治医などで話し合いをして決めることが基本です。

※参考:e-Gov法例検索「労働安全衛生法 第六十六条

ドライバーの健康を管理するポイント

健康診断は少なくとも毎年1回~2回行うものなため、それまでに体調不良を抱える可能性はないとは言えません。担当者は事故を起こしてしまわないようにドライバーの健康を日常的に確認・管理することも責務となってきます。

ここからはドライバーの健康を守るためにできる、普段の健康管理のポイントを解説します。

点呼や健康管理ノートを実施する

体調は日々変わるものなため、突然不調が出始めることもあります。乗務前に体調不良に気がつくためにも日々のチェックを慎重に行っていきましょう。

ドライバーへの普段の健康管理としては、点呼と健康管理ノートがあります。点呼はドライバーの管理担当者(もしくは点呼執行者)が乗務前に都度行うものです。

事業所などで必ず対面でチェックし、体調や血圧、アルコールの有無を確認します。すべての項目で問題がないことが確認できたら、ドライバーは乗務へ向かうのが一般的です。点呼では、次の6つの項目で確認します。

  • 声音や表情におかしい様子はないか
  • 睡眠不足はないか
  • 疲労・病気はないか(メンタルや腰痛など)
  • 飲酒の有無の確認(目視確認とアルコールチェッカー)
  • 熱中症や感染症の兆候の確認など

基本的には対面が推奨されますが、早朝・深夜の勤務や事業所から遠隔地での勤務となるドライバーの場合、電話やオンラインツールを活用した点呼実施を行います。

また、健康管理ノートはドライバーの自主的な健康管理を助けるのに使います。

使い方は日々の点呼時に合わせて計測する血圧や体調を、ドライバーに別途記録してもらうイメージです。日々の体調を記録することで客観的なデータとして変化を観測することができるメリットがあります。

全日本トラック協会では、トラックドライバー向けに健康管理ノートとして「セルフケアチェックノート」を公開しています。無料で使うことができるので、ぜひ活用してみてください。

※参考:全日本トラック協会「セルフケアチェックノート」「点呼の実施方法について

運転時間や休憩時間を確認する

ドライバーが適切に休みを取れているのかの確認も担当者の義務です。運転時間が超過していないか、休憩時間を十分取れているかを都度確認しましょう。

なお、運転時間や休憩時間は、厚生労働省が定めた「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」に準拠することが基本です。それぞれ次のように基準が定められています。

運転時間の基準 休憩時間の基準
  • 連続運転は4時間まで
  • 1日の運転時間は9時間まで

※2日平均として

  • 連続運転が4時間以上は30分休憩を取る
  • もしくは10分以上の休憩を分散して取る
  • 1日勤務後は連続8時間の休息を取る

トラックドライバーの1日あたりの拘束時間は最大13時間までとされています。しかし、そのうち運転できるのは1日9時間まで、連続運転は4時間までです。(2日平均として計算する)拘束時間に対し、すべての時間を運転できない点は注意が必要でしょう。

特に連続運転時間と休憩時間は、うっかり超過してしまわないように気を配る必要があります。もし無理な勤務状況な場合はドライバーと相談し、勤務計画を改善するようにしましょう。

なお、万が一ドライバーが1週間40時間以上かつ1ヶ月80時間の勤務になり、疲労が認められる場合は法令に則り、医師による面接指導が必要になるので注意してください。

※参考:厚生労働省「トラック運転者の労働時間等の改善基準ポイント

※参考:e-Gov法例検索「労働安全衛生法 第六十六条の八」「労働安全衛生規則 第五十二条の二

ドライバーの健康管理でよくある疑問

ドライバーの健康管理は細やかなカバーが求められ、担当者が把握することは数多くあります。しかし初めて担当する場合は、頭に留めておくべき事柄もわからないことが多いはずです。

そこで、ドライバーの健康管理で発展しやすい疑問を集めました。これから管理を任される担当者の方はぜひご覧ください。

健康診断を受けさせる労働者は?

運送業に勤める正社員は漏れなく検診を受ける必要があります。

ただし非正規でも、一定以上勤務している労働者には健康診断を受けさせなければいけません。なお、非正規の場合は1年以上雇用している、もしくは雇用が見込まれ、1週間の労働時間が正社員の4分の3以上の労働者が対象です。

また、派遣社員の場合は派遣元の派遣会社での健康診断となることが一般的です。

※参考:厚生労働省「Q16.一般健康診断では常時使用する労働者が対象になるとのことですが、パート労働者の取り扱いはどのようになりますか?

健康診断の費用は事業者側が負担すべき?

健康診断は事業者が明確に法律上で明記されている義務の一つです。そのため、費用は事業者が全額負担することが基本です。

また、ドライバーが健康診断後に不調が見られる場合の二次健康診断も、事業者負担となります。ただし二次健康診断については労災保険制度の対象となり、事業者が支払っている保険から賄われることになるでしょう。

なお、普通の健康診断は1人あたり4,000~10,000円程度の費用がかかります。

※参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく定期健康診断関係資料

健康診断結果の管理は何年するべき?

労働基準法に基づき、雇用者側は健康診断の結果を5年間保存しておく義務があります。

ただし、二次健康診断の場合は義務はありません。しかし、労働者の健康を管理する観点から、二次健康診断の結果も保存しておくことが推奨されます。

なお、検査結果の閲覧については厳重な管理が必要です。健康診断の内容はあくまでも個人情報なため、結果の閲覧は健康管理の担当者や産業医のみに絞る必要があります。

ただ、必要な際にいつでも取り出して閲覧・提出などができるように、しっかりと整理整頓して保存をしておきましょう。

※参考:厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針

ドライバーの健康診断は安全運転につながる

運送事業を安全に継続するためには、ドライバーの健康を維持することが肝心です。法律上も事業者には健康診断の実施や健康を管理する義務が明記されているため、担当者は責任を持って取り組む必要があるでしょう。

健康診断で病気の兆候が見つかることもあります。ドライバーが運転不能となり事故に陥ることも未然に避けられるかもしれません。そのためには健康診断の意義を周知させ、ドライバーが足を揃えて健康診断を受けるように指導することも仕事の一つです。

また、健康診断だけに頼らず、日常的に乗務前の点呼などでドライバーの体調を気遣うことも大切です。細やかなフォローでドライバーが安全・安心に勤務できるように努めていきましょう。

松井 涼

松井 涼

運送業に特化した求人サイト「ドラピタ」の制作スタッフとして取材・撮影・ライティング・採用コンサルなど、400社以上の採用支援の経験を経て、現在ではメディアの改修・運営・マーケティングの専属に。現在は、運送業の採用促進のためのツール、商品企画なども行い、運送業の人材不足の改善に多角的観点から注力している。
松井 涼

松井 涼

運送業に特化した求人サイト「ドラピタ」の制作スタッフとして取材・撮影・ライティング・採用コンサルなど、400社以上の採用支援の経験を経て、現在ではメディアの改修・運営・マーケティングの専属に。現在は、運送業の採用促進のためのツール、商品企画なども行い、運送業の人材不足の改善に多角的観点から注力している。