近年、働き手の高齢化や減少が深刻化している物流・運送業界では、配送ルート最適化により業務の効率化や担当者の負担軽減が求められています。
配送ルートは従来、熟練の配送係や担当者が作成していました。
しかし、時間指定や荷物の積み下ろしなど、さまざまな制約や条件を考慮する必要があり、配送ルート作成に時間と手間がかかっているのが現状です。
さらに、属人化も問題視されています。
この記事では、配送ルート最適化にAIを活用したアプリ・サービスを利用するメリットや、おすすめのアプリ・サービスをご紹介します。
また、選び方のポイントまで解説しますので、ぜひ参考にしてください。
配送ルート最適化とは
配送ルート最適化とは、配送先までの経路や順番、積載量、配送距離、納品時刻、車両台数など、複数の条件に基づき最も効率の良い配送ルートを計画することです。
物流・運送業において、配送時間の短縮や効率化のための配送ルートの作成は、欠かせない業務の1つです。
まずはじめに、物流・運送業界における配送の現状や、配送ルート作成の課題について解説します。
物流・運送業界の現状
近年、インターネットショッピングの需要の増加に伴い、小口配送が増加しています。
小口配送が増加することにより、トラックの積載効率が低下して配送回数が増加しています。
また、少子高齢化が進む昨今、運転手の高齢化や人出不足が深刻化しているのが現状です。
さらに、2024年4月から始まった運転手の労働時間の上限規制により、さらなる労働力不足が深刻化するといわれています。
こうしたなかで、物流の効率化への取り組みが求められており、配送ルート最適化が重要となってきています。
2024年4月に施行されたドライバーの働き方改革や、労働時間の変更点については、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
「ドライバー働き方改革の改正点を詳しく解説|物流・運送業界への影響とは?」
「【2024年4月改正】ドライバーの労働時間の変化点|ポイントをわかりやすく解説!」
配送ルート作成の課題
従来の配送ルート作成には、下記のようなさまざまな問題や課題が挙げられます。
- 配送ルートの作成に手間や時間がかかる
- ベテラン配車係への属人化と負担の偏り
- 多くの制約条件を考慮しなければならない
- 配送タイミングを考慮する必要がある
- 配送するドライバーの負担を少なくする必要がある
- リアルタイムの配送状況の把握が難しい
配送ルートを最適化するためには、上記で挙げた課題を解決する必要があります。
しかし、近年ではAI技術が急激に進歩しており、配送ルート作成の時間短縮、制約条件を考慮した配送計画などができるようになっています。
AIを活用した配送ルート最適化アプリ・サービスのメリット7つ
AIを活用した配送ルート最適化アプリやサービスを利用することで、得られるメリットは以下の7つが挙げられます。
- 配送ルート作成の時間が短縮できる
- 配送ルートの品質が安定する
- ドライバーの配送時間が短縮できる
- コスト削減ができる
- カーボンニュートラルの実現に貢献できる
- ドライバーに効率的な指示が出せる
- 新たなビジネスを受注する余裕ができる
上記のメリットは、配送ルート最適化につながるものばかりです。それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
①配送ルート作成の時間が短縮できる
AI技術を用いた最適なルートの計算・作成ができるため、配送時間を大幅に短縮できます。
配送ルート作成は、複数ある配送先によって異なる受け取り時間の指定や、荷物の積み下ろしなどの時間の考慮など、さまざまな制約や条件を考慮しながら作成する業務であり、時間をかけて作成する必要がありました。
配送ルート最適化ツールを使用することで、偏りがちになっていたベテラン配車係への業務負担が解消できるため、他の仕事に注力できるメリットが得られます。
また、配送ルート最適化ツールにより、最適なルートを割り出せるため、効率的にサービス提供ができるようになるのも魅力の1つです。
②配送ルートの品質が安定する
従来は、ベテラン配車係が長年培ったスキルで配送ルートを作成していました。
しかし、配送ルート最適化ツールを使用することで、新人社員でもツールの使い方を理解できれば、簡単に配送ルートの作成ができるようになります。
ツールを利用することで、属人化も防げるうえに配送ルートの品質が安定するメリットを得られるでしょう。
③ドライバーの配送時間が短縮できる
配送ルート最適化ツールにより、効率的なルートで配送できるため、ドライバーの配送時間が短縮できるのもメリットの1つです。
ドライバーの配送時間が短縮されることで、ドライバーの長時間労働の抑制につながり、2024年4月から開始されたドライバーの長時間労働の上限規制対策もできるようになります。
また、ドライバーの労働時間の負荷を軽減することで、健康被害や疲れによる事故の防止、配送ミス・遅延の抑制にもつながるでしょう。
④コスト削減ができる
配送ルート最適化により、人件費・燃料費・車両費などのコスト削減が期待できます。
- 配送時間の短縮:時間外労働・休日労働・深夜業の軽減による人件費の軽減
- 走行距離の短縮:燃料費の削減
- 積載率向上による車両台数の削減:車両維持に関わる費用を抑制
ツールの利用によりコスト削減につながれば、自社の利益向上が期待できるでしょう。
⑤カーボンニュートラルの実現に貢献できる
配送ルート最適化により、配送時の走行距離が短縮できるため、CO2の排出量の削減につながり「カーボンニュートラルの実現」に貢献できるメリットがあります。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスを吸収・除去して「排出量を差し引きゼロ」にした状態に戻すことです。
物流業界もCO2削減への取り組みが求められており、取り組みとして配送ルート最適化が有効的といえるでしょう。
⑥ドライバーに効率的な指示が出せる
配送ルート最適化システムの機能の1つに、リアルタイムで動向管理できるものがあります。
その機能を活用すれば、ドライバーに効率的な指示を出せるようになります。
例えば、急な配送依頼や配送遅延が発生した際に、動けるドライバーへの指示や、応援できるドライバーを確保するなど、効率的な指示を出せるようになるでしょう。
⑦新たなビジネスを受注する余裕ができる
配送ルート最適化により、業務が効率良くまわるようになれば、より多くの仕事に対応できるようになる可能性があります。
業務の効率化により、業務拡大や新たなビジネスを受注する余裕が生まれ、自社の利益拡大にもつながるでしょう。
配送ルート作成におすすめのAIを活用したアプリ・サービス7選|活用・導入事例も紹介【無料もあり】
この章では、配送ルート作成に役立つAIを活用したアプリやサービス7選をご紹介します。
- ZENRIN ロジスティクスサービス|コストパフォーマンスに優れた配送計画を短時間で作成
- LocoMoses|複雑な配送計画も自動作成
- Loogia|高精度な配送ルートの作成が可能
- DRIVEBOSS|優れた操作性と走行履歴記録ができるスマホ連携機能
- wise systems|計画から分析まで一貫対応可能
- LYNA 自動配車クラウド|何万~何十万通りの計画を高速で提案
- AI-Stream QuickPlan|複数エリアにまたがる配送計画を一括最適化
特徴や搭載機能、活用・導入事例もご紹介しますので、自社に合ったアプリ・サービスを選ぶ際の参考にしてください。
ZENRIN ロジスティクスサービス|コストパフォーマンスに優れた配送計画を短時間で作成
ZENRIN ロジスティクスサービスは、運送・配送業務における最適化を図るために、下記のサービスを提供しています。
- 配車計画:制約条件を加味した最適な配車計画が簡単に作成できるAI自動配車システム
- ナビゲーション:特殊車両・大型車の規制も考慮できる輸配送の効率を高めるナビゲーションアプリ
- 動態管理:車両位置や走行経路など、業務進捗を可視化する車両動態管理システム
- 固定ルート作成ツール:独自経路を作成・登録し、通常のナビでは実現できない巡回ルートの運行を支援するツール
- API連携:自社の輸配送システムに住宅地図や位置情報データを連携できるサービス
ZENRIN ロジスティクスサービスを導入した企業の課題や、導入効果、利用料金は下記のとおりです。
課題・背景 |
・担当者2名が交代で、配送計画を1日がかりで作成していた ・外部クライアントにも配送サービスを展開するため、効率化が急務に進める必要があった |
導入効果 |
・配車作業時間を大幅に短縮。ドライバーの配送効率向上により、残業時間も削減 ・経験や慣れが必要な業務も、AI活用の自動配車で質が担保できるように |
利用料金 |
要お問合せ |
引用:「ZENRIN ロジスティクスサービス」
LocoMoses|複雑な配送計画も自動作成
OKIが提供している、配送計画最適化サービス「LocoMoses」は配送先位置、配送車両の積載量など、さまざまな配送要件に基づき、稼働・リソースの節減を可能とした最適な配送計画が作成できます。
LocoMosesの特徴は下記のとおりです。
- 燃料費、高速道路料金といった配送コストを少なくする配送計画が可能になる
- 熟練社員が配車業務で考慮する観点を機能に盛り込める
- 新人社員でも熟練社員と同等以上の配送計画を短時間で作成できる
- 「分割配送」手法を取り入れた高効率な配送計画の立案が可能になる
OKIが、他企業と共に配送計画自動化アルゴリズムを使った実証実験の事例「同アルゴリズムによる計画と熟練の配送計画策定のプロによる計画を比較」では、下記のデータを得ることができています。
- 走行距離:1日あたり約300km削減(13台分の合計値)
- コスト:年間約700万円削減(燃料費+高速道路利用料)
- CO2:年間約440kgの削減効果(見込み)
利用料金 |
要お問合せ |
引用:OKI「2024年問題をテクノロジーで乗り越える共創パートナーを募集します!」
Loogia|高精度な配送ルートの作成が可能
配送ルート最適化サービス「Loogia(ルージア)」は、累計200社以上の導入実績をもっています。
名古屋大学で研究されている世界最高水準の「組合せ最適化」という技術を活用し、最適な配送ルートの作成を可能にしたサービスです。
Loogiaの特徴は下記が挙げられます。
- 実装工計画を元にした「ズレない」配車計画が可能
- 現場ならではの細かな制約を加味した「現場で使える配車計画」が可能
- 使いやすさを追求したシンプルな操作画面で「誰でも簡単に配送・配車」が可能
- 専任スタッフによる「安心の導入サポート」が可能
Loogiaを導入した企業の課題や、導入効果、利用料金は下記のとおりです。
課題・背景 |
・販路を広げたことにより配送ルートが煩雑になることに備えたい ・今後の売り上げ拡大に向けて物流の標準化を行いたい |
導入効果 |
・スピーディーに配送ルートが作成されるようになった ・配送ルートに関する社内調整がしやすくなった ・販売の機会ロスが減った ・物流の標準化、IT化ができ、パートの方にも操作してもらう見通しが立った |
利用料金 |
・拠点数、車両台数に応じた月額料金 ・初期費用15万円~(税別)+月額料金20万円~(税別) |
引用:Loogia「導入事例」
DRIVEBOSS|優れた操作性と走行履歴記録ができるスマホ連携機能
DRIVEBOSSは、導入実績2,000件を超えており、30日間の無料トライアルが可能です。
DRIVEBOSSでは、下記の5つの機能を利用できます。
- 計画作成:基本情報と条件などを入力してワンクリックするだけで最適な送迎・巡回計画を作成
- 業務管理:スマホを活⽤した⼀⽇の活動内容の可視化
- 動態管理:各担当者・⾞両の現在位置や業務状況の確認・指示が可能
- 安全運転支援:ドライバーの運転を客観的な指標で評価
- 日報作成:1⽇の活動内容、⾛⾏経路、安全運転評価が記載された⽇報を⾃動作成
DRIVEBOSSを導入した企業の課題や、導入効果は下記のとおりです。
課題・背景 |
・送迎計画作成は特定の担当者にしかできない業務であることが問題だと認識していた |
導入効果 |
・ベストに近い計画が1クリックでできあがるようになった ・経験がなくても簡単に計画作成できるようになった |
利用料金 |
・送迎計画自動作成システム:月額7,500円~(税別)+スマホ連携機能780円~(税別) ・配車計画自動作成システム:月額35,000円~(税別)+スマホ連携機能7,800円~(税別) ・業務見える化テレマティクス:月額1,500円~(税別) |
wise systems|計画から分析まで一貫対応可能
ワイズ・システムズでは、配送計画から実施、業務の可視化、分析まで、トータルサポートを提供しており、業務効率の改善が期待できます。
ワイズ・システムズの機能は下記のとおりです。
- 配送情報入力やドライバーシフト・休憩時間など、主に配送担当者の業務短縮につながるさまざまな機能を搭載
- ルート配信・編集やドライバーアプリからナビアプリへ自動連携など、ドライバーの利便性アップにつながるさまざまな機能(一部、配送担当者に関わる機能も)を搭載
- ドライバー位置・作業進捗のリアルタイム(30秒更新)の確認やお客様への通知(オプション)など、配送担当者や運行管理者の動態管理を向上させる機能を搭載
- KPI分析やドライバー日報など、運行管理者やドライバーの利便性向上につながるレポート機能を搭載
ワイズ・システムズを導入した企業の課題や、導入効果、利用料金は下記のとおりです。
課題・背景 |
・関係者間の連携・調整にロスがあることを痛感していた |
導入効果 |
・各チームと連携するアプリケーションを活用することで、配車担当者・ドライバー・商品担当者がリアルタイムでつながることができ、業務効率が改善された |
利用料金 |
・初期費用は要お問合せ ・通常プラン:月額4,500円/台 ・固定ルートプラン:月額3,000円/台 |
引用:「wise systems」
LYNA 自動配車クラウド|何万~何十万通りの計画を高速で提案
「LYNA 自動配車クラウド」は、初心者でも簡単に優れた配車計画を作成できるようになる自動配車システムです。
完全クラウドタイプの自動配車システムなので、インターネット環境さえあれば、パソコンへのインストールなく利用できます。
また、LYNA 自動配車クラウドでは、30日間の無料トライアルも実施しています。
LYNA 自動配車クラウドで利用できる標準機能は下記のとおりです。
- 車両の稼働状況をグラフで確認できる
- 配送予定の順番変更が手動でできる
- 車両別の配送ルートを一覧表示できる
- 4パターンの計画表示画面から選べる
- 車両ごとに荷物を適切に振り分けられる
- 複数の帳票から用途にあわせたものを出力できる
LYNA 自動配車クラウドを導入した企業の課題や、導入効果、利用料金は下記のとおりです。
課題・背景 |
配送ルート作成を配車係のマンパワーで乗り切っていた |
導入効果 |
・配車係の負担が減少 ・人的ミスの減少 |
利用料金 |
・月額50,000円~ ・利用する拠点数、車両台数、ご利用人数等によって料金は異なる。 |
引用:「LYNA 自動配車クラウド(導入事例)」
AI-Stream QuickPlan|複数エリアにまたがる配送計画を一括最適化
AI-Stream QuickPlanは、AIを利用した最適な配送・巡回ルートを立案するクラウド型サービスを提供しています。
また、管理者機能(プランニング、リプランニング)の無料トライアルを2週間利用できます。
AI-Stream QuickPlanの特徴は下記のとおりです。
- 配送先が1,000件でも15秒で最適ルートを計画可能
- 時間指定や優先度など要件を考慮した巡回ルートの作成が可能
- 複数エリアの一括処理によりエリアに捉われない最適なルート計画を作成可能
- 出発地と到着地を指定ができるため、倉庫から自宅駐車場へ帰るルートの計画も可能
- 配送進捗管理がスマホアプリでも可能
AI-Stream QuickPlanを導入した企業の課題や、導入効果、利用料金は下記のとおりです。
課題・背景 |
・配送における配送の属人化が課題となっていた |
導入効果 |
・AIが最適なルートを瞬時に立案し、プランニングと配送業務の属人化を解消できた |
利用料金 |
要お問合せ |
参照:富士電機ITソリューション株式会社「AIルート最適化プランニングサービス(AI-Stream QuickPlan)導入事例」
配送ルート最適化アプリ・サービス|選び方のポイント
数ある配送ルート最適化アプリやサービスを比較する際のポイントは以下のとおりです。
- 自社に合った制約条件が設定できるか
- 計画修正や指示変更を配送中に行えるか
- お試しができるか
- サポート体制が整っているか
AIを使用したルート作成ができるアプリやサービスを選ぶ際は、自社が運用するための条件設定や、イレギュラーへの対応ができるものかを確認しておきましょう。
また、自社にマッチしたサービスを提供してくれるかどうかの確認のために、お試し期間があるかも大切な比較ポイントです。
サービス導入後、運用が定着するまでの間、しっかりとサポートしてくれるかも確認しておくとよいでしょう。
配送ルート最適化は業務の効率化に欠かせない
配送ルート最適化とは、複数ある配送先まで効率的に周るための条件を考慮しながら最適なルートを作成することです。
配送ルート最適化には、AI技術を活用したサービスやアプリの利用がおすすめです。
アプリやサービスを利用する際には、自社が求める機能が搭載されているか確認しておきましょう。
また、サポート体制が整っているのかや導入時のお試し利用ができるかも、選ぶ際のポイントです。
配送ルート最適化だけではなく、ドライバー不足にお悩みなら、全国に対応している求人・転職サービスの「ドラピタ」に掲載してみてはいかがでしょうか。
「ドラピタ」は、ドライバー案件に特化した求人サイトです。
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