ドライバーの拘束時間が1日16時間を超えてしまった場合、運行管理者として、どう対応するべきか、罰則があるのでないかと悩む方もいるのではないでしょうか。
ドライバーの拘束時間は、2024年4月に改正され、拘束時間の上限や休息期間など、さまざまなルールが定められました。
そこで今回は、ドライバーの拘束時間が16時間を超えた場合の罰則や対応についてご紹介します。また、拘束時間の上限を超えないためにできること、改正された改善基準告示の変更点などについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
ドライバーの拘束時間が16時間を超えた場合【罰則】
ドライバーの拘束時間が定められている改善基準告示は、法律ではないので違反に対する懲役や罰金といった罰則は定められていません。万が一、ドライバーの拘束時間が16時間を越えてしまったとしても罰則を科せられることはないでしょう。
ただし、違反が認められた場合や悪質だと判断された場合、運送業者は労働基準監督署から指導が入る可能性があります。さらに、重大な違反の疑いがあると認められた場合は、行政処分を受けることもある点に注意が必要です。
また、運行管理者が違反行為をドライバーに指示したり、隠蔽・改ざんしたりすると、運行管理者資格者証の返納命令を受けることもあります。国土交通省は、過去3年分の運送事業者に対する行政処分の履歴を公表しているため、違反を犯すと、顧客の信頼を失くし、復帰することが難しくなります。
ドライバーの拘束時間が16時間を超えた場合【対応】
この章では、万が一ドライバーの拘束時間が16時間を超えてしまった場合の対応をドライバーと運行管理者の視点でご紹介します。
ドライバーが行うべき対応
運行中のドライバーが、拘束時間が16時間を超えてしまったことに気づいた場合に行うべき対応は下記のとおりです。
- 運行管理者へ迅速に報告する
- 運転をすぐに中止して休憩をとる
- 正確な運行記録の記入と提出を行う
まずは、すぐに運転を中止して運行管理者へ報告を行いましょう。報告後は速やかに休憩に入ることが大切です。その後、正確な運行記録の記入をして提出する流れとなります。
運行管理者が行うべき対応
ドライバーから報告を受けた運行管理者が行うべき対応は下記のとおりです。
- ドライバーの報告内容の確認と状況把握
- 監督官庁へ迅速に連絡を入れて事後報告書の提出
- 原因の究明と再発防止の策定
運行管理者は報告された内容を確認して、拘束時間の超過がどれほどなのか、ドライバーの現在地や休憩の有無などを把握しましょう。
次に、監督官庁へ早急に連絡をして事後報告書を作成し、提出します。また、拘束時間が超過した原因を明確にし、再発防止に努めなければなりません。
16時間を超えないために運行管理者ができること
ドライバーの拘束時間が16時間を超えないように、運行管理者ができることとして下記が挙げられます。
- ゆとりをもった配車計画の作成
- 運送状況の把握
- 運行管理のデジタル化
それぞれについて詳しくみていきましょう。
ゆとりをもった配車計画の作成
ドライバーが16時間を超えた運転をしないようにするためには、運行管理者による、ゆとりのある運行指示と配車計画が重要です。
ドライバーが過重労働にならないように、管理者が配車の妥当性を常にチェックすることが求められます。
運送状況の把握
運行管理者は、ドライバーの運送状況を常に把握しておくことが大切です。また、ドライバーの健康状態をチェックする仕組みを構築することで、体調不良の兆候を見逃さず、適切に休憩を取得してもらうことにつながります。
運送状況を把握することで、結果として、拘束時間が16時間を超えることを防げるでしょう。
運行管理のデジタル化
ドライバーが1日の拘束時間を守るには、厳格な運行管理や勤怠管理が求められます。IT点呼システムや配車システム、デジタルタコグラフなど、デジタルツールの活用は、管理業務の効率化にもつながるメリットが得られるでしょう。
蓄積されたデータを有効に活用して、最適な運行計画や配車ができるため、拘束時間を超えない勤怠管理が可能になります。
2024年に改正された「改善基準告示」の変更点
この章では、2024年4月に改正された「改善基準告示」で、ドライバーの拘束時間や休息期間はどのように変更されたのか、わかりやすく解説します。
ドライバーの「拘束時間」の変更点
【トラックドライバーの場合】
改正前 |
改正後 |
1か月 293時間以内 ・労使協定により、1年のうち6か月までは、1年間の拘 束時間が3,516時間を超えない範囲において、1か月320 時間まで延長可能。 |
1年 3,300時間、かつ、1か月 284時間 ・ 労使協定により、1年のうちで6か月までは、1年間の拘束時間が3,400時間を超えない範囲において、1か月310時間まで延長可能。 ・この場合において、1か月の拘束時間が284時間を超える月が3か月を超えて連続しないこと。また、1か月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努めること。 |
1日 原則13時間 最大16時間 ・15時間超えは1週間2回以内 |
1日 原則13時間 最大15時間 ・1週間における運行がすべて長距離貨物運送であり、かつ、一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけ るものである場合、当該1週間について2回に限り最大拘束時間を16時間まで延長可能 ・14時間を超えては1週間2回以内を目安として、可能な限り少なくするよう努めること。 |
ドライバーの「休息期間」の変更点
【トラックドライバーの休息時間】
改正前 |
改正後 |
継続8時間以上 |
継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないこと ・1週間における運行がすべて長距離貨物運送であり、かつ、一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけるものである場合、当該1週間について2回に限り、継続8時間以上とすることができる。この場合、一の運行終了後、継続12時間以上の休息期間を与えること。 |
改善基準告示の特例と適用除外業務について
改善基準告示で定められた拘束時間や休息期間には、特例や適用除外となる業務も定められています。どのような事例で特例が認められるのかを知っておくことも、拘束時間の上限を守るために重要です。詳しい内容をみていきましょう。
分割休息
ドライバーは業務上、継続して9時間の休息期間を確保することが難しい場合、条件によって分割休息が可能です。特例となる分割休息の条件は下記のとおりです。
- 休息期間を分割する際は1回当たり継続3時間以上とし、2分割又は3分割までとする
- 1日において、2分割の場合は合計10時間以上、3分割の場合は合計12時間以上の休息期間が必要
ただし、休息期間を3分割する日が連続しないよう努める必要がある点に注意しましょう。
2人乗務
1台の自動車に、同時に2人以上のドライバーが乗務し、さらに、ドライバーが身体を伸ばして休息できる設備が車両にある場合に適用される特例です。
拘束時間は最大20時間まで延長でき、休息期間は4時間まで短縮可能になります。
さらに、24時間までの延長、28時間延長の特例も下記の条件を満たせば可能です。
設備が次の①②のいずれにも該当する車両内ベッドであり、かつ、勤務終了後、継続11時間以上の休息期間を与える場合は、拘束時間を24時間まで延長することができます。 この場合において、8時間以上の仮眠時間を与える場合には、当該拘束時間を28時間まで延長することができます。 ① 長さ198cm以上、かつ、幅80cm以上の連続した平面であること。 ② クッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるものであること。 |
隔日勤務
業務上、やむを得ない場合において、2暦日※1の拘束時間は21時間で、かつ勤務終了後の休息期間は20時間の確保ができるときは、隔日勤務が認められる特例です。
さらに、下記の条件を満たすことで、24時間まで延長ができます。
・ 事業場内仮眠施設又は使用者が確保した同種の施設において、夜間に4時間以上の仮眠を与える場合には、2週について3回を限度に、この2暦日の拘束時間を24時間まで延長することができます。 ・ 2週における総拘束時間は126時間(21時間×6勤務)を超えることができません。 |
※1 暦日(れきじつ):真夜中 (00:00:00) から次の真夜中までの時間間隔
フェリー
フェリーの乗船時間が8時間を超える場合において、下船時刻までの間を休息時間と認める特例です。
フェリー乗船時間を除いたあとの休息期間の考え方は、フェリーの下船後、勤務開始時刻から勤務終了時刻までの時間の半分以上でなければならない点に注意しましょう。
適用除外業務
ドライバーの労働時間の上限を含む改善基準告示では、適用除外となる業務も定められています。具体的には下記のとおりです。
- 災害対策基本法等に基づく緊急輸送の業務
- 人命または公益を保護するために、法令の規定または国もしくは地方公共団体の要請等に基づき行う運転の業務
- 消防法等に基づく危険物の運搬の業務
上記のような法令や国・自治体の要請等に基づく緊急輸送や、危険物輸送(石油タンクローリー等は除く)は改善基準告示の適用除外となります。
運行管理者は16時間を超えないような計画と運送状況を把握する必要がある
ドライバーの拘束時間が16時間を超えてしまった場合、定められている改善基準告示は法律ではないため、罰則が科せられることはありません。
ただし、罰則はなくても、遵守することが求められているため、注意が必要です。違反が認められた場合や悪質だと判断された場合、また、重大な違反の疑いがあると認められた場合、労働基準監督署からの指導や行政処分を受けることもあります。
万が一、拘束時間を超過してしまった場合、ドライバーは、運行管理者へ迅速に報告して運転をすぐに中止して休憩をとるなどの対応が必要です。運行管理者は、状況を把握して監督官庁へ迅速に報告する対応が求められます。
運行管理者は、拘束時間を超えない運行計画の作成や、ドライバーの運行状況を常に把握しておく必要があります。運行管理のデジタル化も有効ですが、ドライバーの確保も重要です。
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