運送会社で働く管理職の方々にとって、ドライバーの勤怠管理は日々の業務でも特に重要です。
しかし、手動での管理や複雑なスケジュール調整は時間がかかり、法令遵守やドライバーの満足度向上にも影響を与えかねません。
この記事では、勤怠管理システムの基本から導入のメリット、おすすめの勤怠管理システムを紹介します。
勤怠管理を効率化したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
運送会社の勤怠管理システムとは?
運送会社の勤怠管理システムは、ドライバーの運行状況を把握し、データを一元管理する専用システムです。
一般的な勤怠管理システムとは異なり、運送業界特有のニーズに特化した機能を備えています。
特徴的な機能の1つが、デジタルタコグラフ(以下デジタコ)との連携です。
デジタコによって記録される車両の速度、走行距離、運行時間などのデータを自動的に取り込むことで、正確な勤怠管理が可能になります。
また、近年の法規制強化に対応し、アルコールチェック機能との連携も標準的となっています。
勤務前後のアルコールチェック結果を自動記録し、管理者がリアルタイムで確認できる体制を構築して、安全運行と法令遵守を両立可能です。
さらに、働き方改革関連法への対応も容易になります。
年間960時間という時間外労働の上限規制に対し、労働時間の自動計算と管理によって、勤務時間の遵守が可能となります。
運送会社の勤怠管理システムは、業務効率化、法令遵守、安全運行の確保という複数の課題を同時に解決する重要なツールです。
運送会社が抱える勤怠管理の課題3選
運送会社の勤怠管理は、単なる事務作業にとどまらず、事業運営全体に大きな影響を与える業務です。
しかし、業界特有の変則的な働き方や人材不足などの課題によって、管理が難しい状況に直面している会社も少なくありません。
ここでは運送会社が抱える3つの課題を解説します。
人手不足で勤怠管理が難しい
運送業界では、ドライバーの勤務時間やシフトが運行スケジュールに応じて頻繁に変動します。
そのため、手作業での勤怠管理は時間がかかるだけではなく、記録ミスが発生する可能性も高くなります。
例えば、長距離運行の際には勤務終了が翌日になることもあり、特別な管理が必要です。
さらに、運送業界全体で人手不足が進行しているため、管理業務を担う人材の確保も難しくなっています。
限られたスタッフが本来の業務と勤怠管理の両方を担当しなければならないケースも増え、結果として業務負担が増大し、効率性が損なわれる状況が生じています。
2024年問題へ対応しなくてはいけない
2024年の働き方改革関連法の改正では、年間の時間外労働が960時間に制限されることが決定しました。
この改正にともない、ドライバーの労働時間を正確に管理することが、法令遵守の観点から重要性を増しています。
この規制に違反すると、行政指導や罰金などのペナルティが科されるだけではなく、企業としての信頼を損なうリスクもあります。
特に、運送会社では忙しい時期や急な運行変更が発生することが多いため、ドライバーの労働時間が規制を超えてしまう危険性が高いのが現状です。
法令遵守を徹底するためには、各ドライバーの残業時間をデータで一元管理し、超過の兆候が見られた際にすぐに対応できる体制が求められます。
ドライバーの不満と離職率の上昇
勤怠管理が不十分な場合、ドライバー間での不公平感が生じることがあります。
例えば、勤務時間と給与計算に誤差が生じたり、残業の多さが不平等だと感じられたりすると、ドライバーの不満が募る可能性があります。
このような状況が続くと信頼関係が損なわれてしまい、離職に至るケースも少なくありません。
ドライバーが離職すると、新たな人材を確保するまでにコストや時間がかかり、さらに人手不足が深刻化する悪循環に陥ります。
一方で、正確で透明性のある勤怠管理が行われていれば、ドライバーの働きやすさが向上し、結果として離職率の低下やモチベーションの向上につながります。
勤怠管理システム導入の3つのメリット
勤怠管理システムを導入すると、勤怠管理業務が効率化されるだけではなく、ドライバーの働きやすさや法令遵守の面でも多くのメリットが得られます。
勤怠管理システムの導入によって得られる主なメリットを3つ紹介します。
効率的な管理と作業負担の軽減
勤怠管理システムを導入すると、従来の手作業や紙ベースでの管理が不要になり、業務全体が効率化できます。
勤怠管理システムは、デジタコと連携して車両の運行データやドライバーの勤務状況を自動的に収集する仕組みが整っています。
そのため、管理者の記録ミスや手入力の手間を削減し、正確なデータ管理が可能です。
さらに、スマートフォンやタブレットを使用した打刻機能を活用すれば、ドライバーが外出先でも簡単に勤務時間を記録できます。
ドライバーは営業所や事務所に戻らなくても勤怠データを送信できるため、管理者もデータの確認や処理をすぐに行えます。
勤怠管理システムを導入すると、管理者とドライバー双方の負担が軽減され、業務の効率化が可能です。
勤怠集計や給与計算の効率化
勤怠管理システムは、集計された勤怠データを自動で保存できるので、給与計算を正確に行えます。
管理者の入力ミスや計算ミスなどのヒューマンエラーを防止できるため、給与計算の精度が向上します。
特に、勤務時間が複雑になりがちな運送業界では、正確な集計はドライバーの信頼を得るうえで重要です。
正確な給与支払いが確保されるので、ドライバーも安心して運転業務に集中できる環境が構築できます。
法改正等にも対応
運送業界では、法改正への対応が業務運営において大きな課題となります。
勤怠管理システムを導入すると、急な法改正にも容易に対応できます。
法改正が行われた場合でも、勤怠管理システムをアップデートするだけで最新の規制に準拠した運用が可能になるためです。
エクセルや手動管理のように、計算式やフォーマットを毎回変更する必要はありません。
例えば、2024年の働き方改革関連法のように残業時間の上限が規制される場合でも、システム上で各ドライバーの労働時間を自動で記録し、残業時間が上限に近づいた際にはアラートを出すことで未然に対応できます。
このような勤怠管理システムの機能を活用すると、法令違反のリスクを抑えつつ、業務を円滑に進めることが可能です。
運送会社の勤怠管理システムに必要な機能
運送会社が勤怠管理システムを導入する際には、運送業界特有の働き方や規制に対応した機能が欠かせません。
自社に合った勤怠管理システムは、業務効率を向上させるとともに、法令遵守やドライバーの負担軽減を実現できます。
以下、運送会社の勤怠管理システムに必要な3つの機能を解説します。
スマートフォンからの打刻機能
運送業界では、ドライバーが長時間にわたって車両を運転し、運行先での業務をこなすことが日常的です。
そのため、営業所や事務所に戻らなくても勤怠を記録できる「スマートフォン打刻機能」は必須と言えます。
スマートフォンから打刻できると、ドライバーは出先でも正確に打刻でき、管理者はすぐにデータを確認できます。
紙のタイムカードやエクセルでの記録の場合、打刻忘れや手入力時のミスが起こりがちです。
しかし、スマートフォンでの打刻は打刻忘れや入力ミスのリスクを大幅に低減します。
また、GPS機能を活用した打刻システムは、どの地点で業務を開始したのかも記録できるため、より正確な勤怠管理が実現します。
シフト管理機能
運送会社では、ドライバーが24時間の交代制で勤務したり突発的なスケジュール変更が発生することがよくあります。
このような不規則な働き方に対応するためには、シフト管理機能が必要です。
シフト管理機能を使えば、ドライバーごとの勤務スケジュールをシステム上で一元管理できるので、スケジュールの調整や交代勤務の確認が容易になります。
例えば、繁忙期や連休などの業務が集中しやすい時期でも、シフト管理機能を活用すると効率的に人員配置を行えます。
また、勤務スケジュールが視覚的に確認できるため、管理者の負担が軽減されるだけではなく、ドライバー自身も自分の勤務予定を把握しやすくなるのがメリットです。
シフト管理機能のある勤怠管理システムは、ドライバーのシフトを組みやすくし、業務効率化が期待できます。
残業時間アラート機能
年間960時間の残業時間上限に対応するためには、システム上で残業時間を監視し、規制超過を未然に防ぐ機能が欠かせません。
残業時間アラート機能を活用すれば、ドライバーごとの勤務時間をリアルタイムで把握し、上限に近づいた際には管理者に通知される仕組みを構築できます。
さらに、運送業界に特化した勤怠管理システムには「430アラート」と呼ばれる機能が搭載されている場合もあります。
「430」は、ドライバーが連続運転を4時間行ったあとに30分以上の休憩をとるという規則です。
430アラートによって、一定時間以上の連続運転を防ぎ、ドライバーに適切な休憩を促すことが可能です。
430アラートは、労働時間管理の精度が向上するだけではなく、ドライバーの健康管理や安全の確保にもつながります。
運送会社におすすめの勤怠管理システム5選
運送業界の勤怠管理には、業界特有のニーズを満たす専用システムが必要です。
以下では、運送会社の管理者にとって特に役立つ5つの勤怠管理システムを紹介します。
それぞれが持つ特徴や料金体系を把握し、業務に最適なシステムを選んでみてください。
TUMIX コンプラ(株式会社TUMIX)
引用:TUMIX コンプラ
TUMIX コンプラは、運送業専用に設計された勤怠管理システムで、ドライバーの勤怠や運行データを一元管理できます。
デジタコやアルコール検知器との連携が可能で、点呼時の簡単な打刻操作だけで正確な勤怠データを取得できます。
また、「改善基準告示」に対応しており、運行記録や勤務簿を自動で作成可能です。
クラウドベースでデータ保存できるので、災害時のデータ保全も安心な勤怠管理システムです。
料金 |
月額17,000円(※追加IDは月額3,000円/ID) |
特徴 |
法令遵守のための運行分析機能や乗務員の教育支援ツールを備え、安全性向上と効率化を両立 |
JICONAX(ジコナクス)(株式会社フルバック)
引用:JICONAX
JICONAXは、デジタコと自動連携し、労働時間や運行状況の管理を効率化するシステムです。
スマートフォンやタブレットを活用して、外出先でも勤務時間を記録できるのが特長です。
ドラレコ映像とヒヤリハット記録をセットで管理できるため、勤怠管理の効率化だけではなく事故を起こさないための意識改革もできます。
ドライバーの安全教育にも役立つので、無事故記録を更新したい企業におすすめです。
料金 |
月額7,000円/管理者1名 |
特徴 |
中小規模の運送会社に適しており、低コストで本格的な勤怠管理機能を網羅 |
ジョブカン勤怠管理(株式会社Donuts)
引用:ジョブカン勤怠管理
ジョブカン勤怠管理は、物流業界に特化した勤怠管理システムではありませんが、日またぎ勤務や多様なシフトパターンに対応可能です。
直感的に操作できる設計になっているため、システム導入後の教育コストを削減できます。
電話やメールで随時問い合わせができるので、初めての勤怠管理システムとしてもおすすめです、
月額の費用を抑えつつクラウドベースでデータを管理したい企業は、ジョブカン勤怠管理を検討してみてください。
料金 |
月額800円/ユーザー(運送業向けセットプラン)※無料プランあり |
特徴 |
無料プランが提供されているため、勤怠管理システムを試してみたい企業におすすめ |
KING OF TIME(株式会社ヒューマンテクノロジーズ)
引用:KING OF TIME
KING OF TIMEは、ICカードやWeb打刻、指紋認証など、多様な打刻方法を提供しています。
残業時間や打刻忘れをアラートで通知する機能もあるので、勤怠管理の精度を高めてくれます。
リアルタイムでドライバーの労働時間を確認できるため、業務の見える化を実現できる勤怠管理システムです。
料金 |
月額300円/ユーザー |
特徴 |
コストパフォーマンスに優れ、低コストで高機能なシステムを導入したい企業に最適 |
労働時間管理システム DiSynapseII(株式会社 情通)
DiSynapseIIは、デジタコを活用して運行計画や労働時間を詳細に管理できるシステムです。
勤怠管理だけではなく、デジタコのデータをもとにドライバーの安全教育や違反防止もできます。
DiSynapseIIは自社開発しているので、導入する際に柔軟にカスタマイズが可能な勤怠管理システムです。
料金 |
要問い合わせ |
特徴 |
長距離運行を行う運送会社や、従業員数の多い企業に向いている勤怠管理システム |
運送会社は勤怠管理システムを導入して業務を効率化しよう
勤怠管理システムは、管理者とドライバーの負担を軽減し、業務効率を向上させるためのツールです。
法令遵守やドライバーの満足度向上を目指す運送会社にとって、勤怠管理システムはなくてはならないものになっています。
自社に合った勤怠管理システムを導入し、管理者とドライバーの双方が働きやすい職場環境を整えていきましょう。