物流業界では、人手不足や生産性向上の必要性が年々増しています。
その課題を解決する手段として注目されているのが「物流倉庫の自動化」です。
この記事では、自動化のメリットや具体的なシステム例、さらに成功事例を紹介します。
この記事を読むと、物流倉庫の自動化が業務効率化にどのように役立つかがわかります。
物流倉庫の自動化とは?導入するメリットは?
物流倉庫の自動化とは、倉庫内で行われている様々な業務を、機械やITシステムを用いて効率化する取り組みのことです。
具体的には、入庫、保管、仕分け、出庫など、これまで人の手に頼ってきたプロセスを自動化し、作業時間やコストを削減することを目指します。
以下では、自動化を導入することで得られるメリットを解説します。
人的コスト削減
物流倉庫の自動化を進めると、人件費を大幅に削減できます。
これまで多くの人員を必要としていた作業を機械やシステムが代行するため、人員の配置を最適化できるためです。
例えば、自動搬送ロボットや自動仕分けシステムを導入すると、24時間365日体制で作業を続けることが可能になります。
これにより、深夜や休日の作業確保にかかるコストを抑えられ、突発的な人員不足のリスクも軽減します。
また、作業スピードが一定に保たれるため、急な繁忙期にも柔軟に対応可能です。
従業員の負担軽減
物流倉庫内では、商品の運搬やピッキング作業など、体力的な負担が大きい業務が数多く存在します。
負担の大きい業務をロボットや自動化システムが代行することで、従業員は体力的な負担から解放され、働きやすい環境を実現可能です。
自動ピッキングシステムは、保管場所をライトや音声でガイドしてくれるため、従業員が迷うことなく作業を進められます。
また、重量物の運搬をロボットに任せると、従業員の腰や関節への負担が減り働きやすい職場環境を構築可能です。
従業員は体力的に消耗する作業から解放され、在庫管理やクレーム対応といった、より高度な判断を必要とする業務に集中できます。
生産性の向上
人が行う作業には時間的な制約がありますが、機械やシステムにはその制限がありません。
自動化によって24時間稼働する仕組みを構築すれば、生産性を飛躍的に高めることが可能です。
特に、ピッキングや仕分け作業は、自動化によってミスの発生率が下がるだけではなく、処理スピードも大幅に向上します。
人力では1、2時間かかっていた作業が、数十分で完了するようになるケースも少なくありません。
さらに、自動化システムを導入すると、リアルタイムでの在庫状況の把握や作業進捗の可視化が可能になります。
その結果、在庫不足や作業遅延といった問題を事前に察知し、すぐに対応できるようになります。
安全性の向上
物流現場では、高所作業や重量物の運搬などの危険をともなう業務が存在します。
これらの作業をロボットや自動化システムに任せると、従業員が負傷するリスクを大幅に低減できます。
例えば、自動搬送ロボットを使えば、重い荷物を遠くまで運ぶ必要がなくなり、腰痛や過労による健康被害を防げます。
また、ピッキング作業においても、自動化システムが商品を取り出してくれるため、従業員が高所に登る必要はありません。
これによって労災事故の発生率が減少し、従業員にとって安全な労働環境を提供できます。
ヒューマンエラーの削減
人が行う作業には、体調やスキル不足、集中力の変化によるミスが避けられません。
しかし、自動化システムでは、設定されたプログラム通りに作業を行うため、ヒューマンエラーの発生率を極限まで抑えられます。
具体的には、ピッキング作業における商品の取り間違いや、仕分け時の誤配送といったミスが大幅に減少します。
さらに、自動化システムは、業務の進行状況や成果を記録し分析する機能も備えているため、ミスの原因を特定して改善策を講じるのも容易です。
その結果、業務の安定性と品質が向上し、顧客満足度の向上にもつながります。
物流倉庫の自動化が直面する課題
物流倉庫の自動化には多くのメリットがありますが、導入には課題もあります。
物流倉庫が直面している主な課題を3つ紹介します。
自動化システムの導入費用
自動倉庫システムの導入には数千万円規模の投資が必要となり、コンパクトなシステムやロボットでも数十万円から数百万円の費用がかかります。
また、導入した機器を制御するための倉庫管理システムの構築費用も考慮しなくてはいけません。
そのため、自動化システムの導入を断念してしまう企業も一定数存在します。
自動化システムは、無理なく導入できる費用で進めていくのが賢明です。
導入費用と長期的な恩恵を比較し、少しずつ自動化を進めていきましょう。
従業員への研修とマニュアル作成
最新の自動化システムは高度な機能を備えているため、操作方法の習得には相応の時間が必要です。
そのため、ベテラン作業員の中には新しいシステムへの抵抗感を持つ人も少なくありません。
効果的な教育を実施するためには、段階的な研修プログラムを実施しましょう。
また、マニュアルを用意していつでも操作を確認できるようにしておくとトラブルを防止できます。
システムや機器のサポート体制の構築
自動化システムが停止すると物流業務全体に大きな影響を及ぼすため、予防保全と障害対応が必要です。
社内に専門知識を持つ技術者を育成するとともに、メーカーやシステムインテグレーターとの保守契約を締結し、24時間365日の支援体制を確保しましょう。
定期点検の実施スケジュール、消耗品の管理体制、緊急時の対応フローなどを明確化し、システムの安定稼働を確保することが重要です。
システムのバックアップ体制を整備し、万が一の場合でも業務を継続できる体制を構築しましょう。
物流倉庫を自動化するシステム5選
物流倉庫を自動化するためのシステムには多種多様な種類があります。
代表的な自動化システムを5つ取り上げ、それぞれの特徴を解説します。
自動倉庫システム
自動倉庫システムは、以下の流れを完全自動化するシステムです。
- 入庫
- 保管
- 出庫
在庫管理から入出庫状況までシステムで一元管理できるのが特徴です。
パレット型自動倉庫システムでは最大30メートルの高さまで商品を保管でき、スペースを最大限に活用できます。
また、縦型回転式棚はコンパクトな設置面積で天井付近までの収納が可能になるので、大量の小物商品を効率的に保管・取り出しが可能です。
その他にも、・バケット型自動倉庫システム、フリーサイズ型自動倉庫システム、移動棚型自動倉庫システムなどの自動倉庫システムがあります。
倉庫管理システム(WMS)
倉庫管理システムは、物流倉庫のあらゆる業務をデジタル化し、効率的な運営を実現するシステムです。
入出庫管理、在庫管理、ピッキング指示、荷役機器の動線管理など、多岐にわたる機能を備えています。
特に、受注データと連動した自動的な作業指示や、作業進捗のリアルタイム管理により、人的ミスを防ぎながら業務効率を向上させます。
また、ラベル発行や帳簿作成にも対応しているので、事務作業の効率化ができるのも特徴です。
有名な倉庫管理システムとしては、以下のものがあります。
- クラウドトーマス
- タナヨミ
- クラウドWMS ロジザードZERO
倉庫管理システムは、倉庫運営の最適化や将来的な需要予測にも活用できます。
デジタルアソートシステム(DAS)
デジタルアソートシステムは、仕分け作業のデジタル化を実現するシステムです。
従来の紙の仕分けリストに代わり、デジタルディスプレイやLEDインジケーターを活用することで、作業者の動きを効率化します。
また、作業履歴がデジタルで記録されるため、ミスの発見も容易です。
有名なデジタルアソートシステムとしては、以下のようなものがあります。
- SPEEDAS(スピーダス)
- ISHIDAデジタルアソートシステム
デジタルアソートシステムは、作業者のスキルに関係なく、一定の精度で仕分け作業ができるシステムです。
自動ピッキングシステム(DPS)
自動ピッキングシステムは、ピッキング作業の効率化と正確性向上を実現するシステムです。
バーコードを読み込むと商品の保管場所がLEDライトで表示されるため、作業者はピッキングの時間を短縮できます。
音声ガイダンスやハンディターミナルとの連携によって、ピッキングミスを防止できることも特徴です。
自動ピッキングシステムには、以下のような製品があります。
- デジタルピッキングシステムdigipica
- 東洋興業デジタルピッキングシステム
ピッキングを自動化すると、作業データを収集し、作業の進捗管理や生産性分析も可能です。
自動搬送ロボット(AGV・AMR・GTP)
自動搬送ロボットには、以下のような種類があります。
- AGV:自動で荷物を搬送するロボット
- AMR:自走可能で棚ごとの商品を運搬できるロボット
- GTP:あらかじめ設定されたエリア内の従業員に荷物を運ぶロボット
AGVは床面に埋め込まれた磁気テープや誘導線に沿って移動し、重量物の搬送を得意とします。
AMRは人工知能とセンサーを活用して自立的に移動経路を決定し、柔軟な搬送を実現可能です。
GTPは商品棚の荷物を作業者のもとへ運搬することで、ピッキング効率を向上させます。
自動搬送ロボットは24時間稼働が可能で、人手不足の解消と作業効率の向上に大きく貢献します。
物流倉庫の自動化を成功させた事例
物流業界では、深刻な人手不足や業務効率化の要請を背景に、大手企業を中心に自動化の取り組みが進んでいます。
最新のテクノロジーを活用して物流倉庫の自動化に成功した代表的な事例を3つ紹介します。
Amazon
Amazonは2023年、千葉みなとフルフィルメントセンターに「Amazon Robotics」を本格導入し、国内最大規模の自動化倉庫を実現しています。
このセンターの最大の特徴は、約2,600台もの自走型ロボット「Hドライブ」を実装していることです。
従来の物流倉庫では、作業者が広大な倉庫内を移動して商品をピッキングする必要がありましたが、「Hドライブ」の導入によって完全に自動化できました。
作業者は定位置で効率的に作業を行えるため、歩行距離が大幅に削減され、作業効率が大きく向上しています。
日立物流
日立物流は、独自開発の統合制御システム「RCS(Resource Control System)」を開発・導入し、物流センター運営の最適化を実現しています。
RCSの特徴は、複数の倉庫管理システムの入出庫状況を分析し、最適な作業指示を自動生成できることです。
埼玉県春日部市と加須市の大規模物流センターですでにRCSは本格稼働しています。
各工程の稼働実績を収集して工程計画に落とし込み、スケジューリングを繰り返していくと最適な工程管理を実現できます。
佐川グローバルホールディングス
佐川グローバルホールディングスは、次世代型の物流自動化に向けて、複数の革新的な技術を導入した「Xフロンティア」を稼働しています。
Xフロンティアは、従来の倉庫と比較して保管数量が50万点増加、GTPシステムを活用して
約40%の生産性向上を実現しました。
また、最新の取り組みとして、AIを搭載した荷積みロボットの実証実験を進めています。
荷物の形状や重量を認識し、最適な積み付けパターンを自動で判断できるロボットです。
さらに、画像認識技術により破損や汚れなどの品質チェックも同時にできるため、作業品質の向上にも貢献しています。
佐川グローバルホールディングスは、今後さらに深刻になる労働力不足と輸送力不足を見据えて、省人化を進めています。
物流倉庫の自動化で生産性向上と人手不足を解消しよう
物流倉庫の自動化は、業界が直面する人手不足や生産性向上の課題を解決する有効な手段です。
自動倉庫システムやWMS、自動搬送ロボットなどの最新テクノロジーを活用することで、作業効率の大幅な向上と人的負担の軽減を同時に実現可能です。
Amazon、日立物流、佐川グローバルホールディングスなどの大手企業の成功事例が示すように、適切な自動化システムの導入は、作業効率を向上させる効果があります。
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