運転日報は会社側がドライバーの運転中の状況を把握し、業務の担い手であるドライバーを守るためのものです。バス・タクシー・トラック運転手などのドライバー業には、必ず記録が必要になります。ただ馴染みがない人には「なぜドライバーが作成するのか?」など、疑問も多いでしょう。
そこで今回はこれから運送会社で働くドライバー向けに、運転日報の必要性や義務を解説します。法律上の義務も絡んでいるため、雇用主側も事前知識として理解しておくと安心です。
実際の運転日報の書き方も紹介するので、参考にしてください。
ドライバーを管理する運転日報の必要性とは?
運転日報は、業務を行うドライバーの情報を会社が把握するために記録します。
会社は提出された日報から、計画通りの運行だったか確認すると同時に、遠隔で働くドライバーが適切な勤務状況か確認します。
例えば提出した日報の結果、到着予定時刻にずれが多い場合には、会社側は別ルートの策定や運行計画を改めることで無理のない計画の再設定を行います。また、ドライバーがきちんと休憩が取れていない場合は、早期発見・改善をすることが可能です。
運転日報は法律上で作成が義務付けられている
貨物自動車運送事業もしくは社有車を所有する一部企業は、法律上で運転日報の作成義務があります。会社は法律に基づき適切な提出指導を行い、所属するドライバーに記録・提出をさせなければいけません。もちろん、ドライバーもそれに従う義務があります。
なお、運転日報に関わる法律は、次の貨物自動車運送事業輸送安全規則と道路交通法施行規則という2つの法律です。
第八条 一般貨物自動車運送事業者等は、事業用自動車に係る運転者等の業務について、当該業務を行った運転者等ごとに次に掲げる事項を記録させ、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。
※引用:e-Gov法例検索「貨物自動車運送事業輸送安全規則 第八条」 |
第九条 法第六十三条の二第二項に規定する運行記録計による記録の保存は、次の各号に掲げる事項を明らかにして行なわなければならない。
一 記録が行なわれた年月日 二 記録に係る自動車の登録番号 三 記録に係る運転者の氏名 四 記録に係る主たる運転区間又は運転区域 ※引用:e-Gov法例検索「道路交通法施行規則 第九条」 |
ドライバー・会社は上記の法律に沿って、日報を作っていくことになります。ただし具体的に記録しなければいけない項目も決まっているので、作成には注意が必要です。
【ドライバー向け】運転日報の書き方
実は運転日報は必要な項目が盛り込まれていれば、記載方法にルールはありません。ドライバーは所属する運送会社の所定の方法・テンプレートなどに従うことになります。
しかし、ドライバーが完全に受け身で運転日報を取り扱うのはおすすめできません。自身の安全を守るためにも、会社側が適切に運転日報を取り扱っているか注意を払っておく必要があります。
そこで、ここからは運転日報の書き方として、記載すべき必須項目を見ていきましょう。
運転日報に記載すべき8つの必須項目
運転日報に記載すべき項目は、貨物自動車運送事業輸送安全規則に明記されています。なお、該当する法律は以下の通りです。
(業務の記録)
第八条 一般貨物自動車運送事業者等は、事業用自動車に係る運転者等の業務について、当該業務を行った運転者等ごとに次に掲げる事項を記録させ、かつ、その記録を一年間保存しなければならない。 一 運転者等の氏名 二 運転者等が従事した運行の業務に係る事業用自動車の自動車登録番号その他の当該事業用自動車を識別できる表示 三 業務の開始及び終了の地点及び日時並びに主な経過地点及び業務に従事した距離 四 業務を交替した場合にあっては、その地点及び日時 五 休憩又は睡眠をした場合にあっては、その地点及び日時 六 車両総重量が八トン以上又は最大積載量が五トン以上の普通自動車である事業用自動車の運行の業務に従事した場合にあっては、次に掲げる事項 イ 貨物の積載状況 ロ 荷主の都合により集貨又は配達を行った地点(以下「集貨地点等」という。)で待機した場合にあっては、次に掲げる事項 (1) 集貨地点等 (2) 集貨地点等への到着の日時を荷主から指定された場合にあっては、当該日時 (3) 集貨地点等に到着した日時 (4) 集貨地点等における積込み又は取卸し(以下「荷役作業」という。)の開始及び終了の日時 (5) 集貨地点等で、当該一般貨物自動車運送事業者等が、貨物の荷造り、仕分その他の貨物自動車運送事業に附帯する業務(以下「附帯業務」という。)を実施した場合にあっては、附帯業務の開始及び終了の日時 (6) 集貨地点等から出発した日時 ハ 集貨地点等で、当該一般貨物自動車運送事業者等が、荷役作業又は附帯業務(以下「荷役作業等」という。)を実施した場合(荷主との契約書に実施した荷役作業等の全てが明記されている場合にあっては、当該荷役作業等に要した時間が一時間以上である場合に限る。)にあっては、次に掲げる事項(ロに該当する場合にあっては、(1)及び(2)に掲げる事項を除く。) (1) 集貨地点等 (2) 荷役作業等の開始及び終了の日時 (3) 荷役作業等の内容 (4) (1)から(3)までに掲げる事項について荷主の確認が得られた場合にあっては、荷主が確認したことを示す事項、当該確認が得られなかった場合にあっては、その旨 七 道路交通法第六十七条第二項に規定する交通事故若しくは自動車事故報告規則(昭和二十六年運輸省令第百四号)第二条に規定する事故(第九条の二及び第九条の五第一項において「事故」という。)又は著しい運行の遅延その他の異常な状態が発生した場合にあっては、その概要及び原因 八 第九条の三第三項の指示があった場合にあっては、その内容 2 一般貨物自動車運送事業者等は、前項の規定により記録すべき事項について、運転者等ごとに記録させることに代え、道路運送車両の保安基準(昭和二十六年運輸省令第六十七号)第四十八条の二第二項の規定に適合する運行記録計(以下「運行記録計」という。)により記録することができる。この場合において、当該一般貨物自動車運送事業者等は、当該記録すべき事項のうち運行記録計により記録された事項以外の事項を運転者等ごとに運行記録計による記録に付記させなければならない。 ※引用:e-Gov法例検索「貨物自動車運送事業輸送安全規則 第八条」 |
上記の法律から記載項目をわかりやすくまとめると以下のようになります。
- 運転手の氏名
- 自動車情報(車種・ナンバー)
- 目的地
- 乗務開始日時/終了日時
- 乗務距離
- 積載状況(※大型車両の場合)
- 休憩や睡眠の取得場所・日時
- 運転を交替した場所・日時(※交替がある乗務の場合)
- 遅延・事故の発生有無(発生した場合は状況も記録)
運送業の運転日報では、これらの9項目が揃っているかを必ず確認しましょう。
【業務用の社有車を保有する企業の場合】4つの必須項目
貨物自動車運送事業以外で、乗車定員が11人以上の社有車を1台以上持っている、または社有車を5台以上持っている企業は運転日報の作成が必要です。
これらの企業では、運転日報で次の4項目が必須になります。
- 運転手の氏名
- 乗務開始日時/終了日時
- 乗務距離
- その他乗務状況の情報
※参考:e-Gov法例検索「道路交通法施行規則 第九条」
実際の運転日報の記録書類の形とは?【実例つき】
必須項目がわかっても、運転日報を初めて触る人はイメージが掴みにくいかもしれません。そこで次は権利フリーで公開されている運転日報を実際に見てみましょう。
本記事では奈良県トラック協会で公開されている、貨物自動車運送事業向けのテンプレートを実例としてご紹介します。
基本的な必須項目が上部にまとまっており、残りは乗務中の到着時刻などをわかりやすく列挙する流れになってます。必須項目外には、高速料金や燃料代なども記載でき、運送に関わる情報が集約されています。
ただ他のテンプレートなどでも記載することはほぼ同じなため、特に変わった特徴があるわけではありません。運転日報は基本的には専門用語などはなく、誰でも簡単に記入できるため気負わず扱うことができます。
※引用:公益社団法人 奈良県トラック協会「運転日報テンプレート(日常点検付き)」
運転日報の電子データ化について|紙媒体との違い
運転日報はデジタコ(デジタルタコグラフ)や運転日報アプリなどによるデジタル管理も可能です。実際に電子データのみで運転日報を扱っている会社も少なくありません。
なお、運転日報を電子化するメリットは、大きくわけて次の3つのメリットがあります。
- 記録情報が正確
- 記入・提出の手間の簡略化
- 複数情報を一挙に記録可能
運転日報をアナログで記録する場合、どうしても手書きによる間違いや管理者の見間違いなどで異なる情報が記録される可能性があります。
しかし電子データ化をすれば自動的に記録をするため、人為的なミスは限りなくゼロになります。また、複数の情報を別々に取り扱う必要もなく、例えばタコグラフなどとあわせて一挙に記録・提出が可能です。ドライバー・管理者の双方向でかかる手間も圧倒的に少ないと言えるでしょう。
【Q&A】運転日報に関するよくある疑問
ここまでで運転日報を触ったことがなかった方も、イメージが何となく見えてきたのではないでしょうか。最後は、運転日報に関するよくある疑問に答えていきます。
ドライバーは運転日報をどれくらいの頻度で提出する?
ドライバーは運転日報を1ヶ月に1回、まとめて会社へ提出します。
ドライバーは提出日まで運転日報を紛失しないように保管する必要があります。ただし電子データの場合は倉庫へ戻った際に自動的に送信されるケースもあります。会社によって異なるため、確認しておきましょう。
提出した日報の記録はいつまで保管される?
運転日報は貨物自動車運送事業輸送安全規則と道路交通法施行規則で、最低1年間保管することが会社に義務付けられています。
ただし労働基準法では、労働者に関する情報は5年間保管しなければいけません。運転日報はドライバーの労働に関連する情報です。そのため、運送会社では労働基準法に則り、運転日報も5年保管する会社が多くなっています。
※参考:e-Gov法例検索「貨物自動車運送事業輸送安全規則 第八条」
※参考:e-Gov法例検索「道路交通法施行規則 第九条」
※参考:e-Gov法例検索「労働基準法 第百九条」
運転日報のアプリにはどのようなものがあるのか?
運転日報のアプリには、「特化型」と「動態管理対応型」があります。
特化型はとにかく運転日報としての役割を追求したタイプです。シンプルな記録のみなため、操作も簡単でデジタル慣れしていないドライバーも導入しやすいでしょう。
一方で動態管理対応型は、運転日報の機能に加えてドライバーを補助する複数機能が搭載されているのが特徴です。機能は導入アプリによりますが、よく見られるものはアルコールチェック機能や危険運転の感知機能、AIによる警告機能などがあります。
運転日報による記録を徹底しよう
人によっては、運転日報を面倒に感じる方も少なくありません。しかし、記録するのは法律上の義務だけではなく、ドライバーを守るためにも存在します。ドライバーにとって運行計画や勤務状況に無理があった場合に、会社側に改善を訴えるための証拠として使えるためです。
自身を守るためにも、運転日報はしっかりと記入・提出するようにしましょう。なお、ご紹介してきた必須項目についても全て揃っているか確認を忘れないようにしてください。