運送業・物流業には、さまざまな課題が山積みとなっています。
トラックドライバーになりたいという若い世代の減少による人手不足、2024年4月から施行される働き方改革関連法による時間外労働の上限規制、それに反比例するかのような、ネットショッピングの需要拡大による運送業の仕事の激増、排気ガスによる二酸化炭素排出量の増加と温暖化…などです。
こうした課題の解決への突破口として注目したいのが「共同配送」です。
共同配送とは?
共同配送とは、トラックやコンテナに複数企業の同じ届け先の荷物を一緒に積載して配送することです。
従来の配送では、A県N市からB県T市に荷を運ぶ場合、複数の企業の荷をそれぞれ複数の運送会社が運びます。当然、複数のトラックが使われることになります。トラックが複数なのでトラックドライバーもそれだけの人数が必要となり、トラックの数が多いということで渋滞になりがちで、多くの二酸化炭素を排出することにもなります。
その荷をすべてまとめ、1台のトラックで運んでしまえば、人件費と燃料費の削減、交通量の減少による環境負荷の抑制、渋滞緩和などにつながることが期待されるわけです。
つまり、道路を走るトラックの台数を減らしつつ、1台当たりの積む荷の量を増やすわけです。
例えばスーパーでは、同じ日用品の同じ種類でも、異なるメーカーの商品が数種類並びます。
同じ歯ブラシという商品でも、A社、B社、C社と複数のメーカーのものがあるわけです。もちろん、A社の商品は歯ブラシだけではなく、他の商品も一緒に運びます。それでも、それらを各メーカーごとに輸送すると、それだけ多くのトラックがスーパーに荷下ろしをすることになり、スーパーの従業員も荷が届く度に陳列していたら作業が大変です。しかし、1台のトラックに異なるメーカーの商品を乗せてしまえば、とても効率的になるわけです。
これが共同配送です。
それぞれの荷を運んでほしい複数企業が連携するだけではなく、複数の運送会社が連携すると、より効率的になります。
共同配送のメリットとデメリット
トラック1台に対する積載量が上がり、効率化やコスト削減が見込まれ運送業界で注目される共同配送ですが、課題も挙げられます。メリットとデメリットを紹介します。
共同配送のメリット
複数企業の荷を積載して配送することにより、トラック1台に可能な限り荷物を積載できるため道路を走るトラックの数を減らすことができ効率的に配送ができます。トラックドライバーも大勢は必要ありません。
トラックが減る分だけ交通量が減り、渋滞が起きにくくなるだけではなく、排出する二酸化炭素の量も減らすことができるはずです。
無駄のない積載が可能になることにより、必要となる人件費や燃料費といったコスト削減にもつながります。
共同配送のデメリット
複数の運送会社の連携、複数の企業の荷のとりまとめなど、システムづくりの準備が大変です。
また、集荷や配送に複数の企業が関わるので、時間、荷の数量などの急な変更への臨機応変な対応が難しくなります。
それだけ複数の企業が関わるので、配送料金の設定も難しいでしょう。いろいろな荷を同じトラックに積み込むため、輸送のためのパレットやダンボールの規格もそろえる必要があります。荷の管理システムも、複数の企業でそろえる必要があります。これまた大変です。
参加する複数の運送会社、荷を預ける複数の企業のいずれにも不公平感がないようにする必要もあります。
ただ、急な変更への対応の難しさ以外は、準備段階でのデメリットなので、きちんとシステムを構築すれば、それほど大きなデメリットは感じないかもしれません。
路線便との違い
トラック輸送に「路線便」というものがあります。
トラックが決められたルートを走って決められた拠点で荷を積み込み、目的地まで荷を運ぶサービスです。
路線バスと同じで、全国各地にルートが張り巡らされています。
利用の仕方も路線バスと似ています。路線バスは、遠方の目的地に行く場合、バスを乗り継いで行きますが、路線便も行き先によって中継地点で一旦、トラックから荷を下ろし、別のトラックにまた積み込んで運びます。場合によっては、この積み替えを何度も行うことがあります。
積み替えを何度も行うと、それだけ荷を傷める可能性、荷を紛失する可能性などが高くなります。
そこで考え出されたのが共同配送です。
複数の依頼主の荷を1台のトラックで運ぶところは路線便と同じです。路線便が路線バスと似ているとするなら、共同配送はタクシーの相乗りに似ています。
共同配送も中継地点での積み替えはありますが、路線便ほど多くはありません。
また、共同配送は複数の依頼主が食品なら食品などと、システムを食品輸送用にカスタマイズできますが、路線便は「決まっているルートを利用する」前提なので、荷の種類が混在することになります。もちろん、共同配送でも混在を前提にしたシステム構築も可能ですが。
共同配送に向いているものと向いていないもの
運ぶ荷が1個か2個くらいなら宅配便を使うでしょう。
また、量がトラック1台分くらいあるならトラック1台を借り切るチャーター便を使います。ただ、大量にあるもののチャーター便を使うほどではない場合、つまり小口の荷の輸送なら共同配送に向いています。加えて、効率良く積めるよう、形が一定のものです。
そして、そのためにシステムを構築するとなると、1年に1回しか配送のないものではなく、定期的に配送する必要のある荷の輸送に向いていると言えます。
例えば日用雑貨、医薬品、食料品、自動車部品などです。
逆に、大き過ぎて形が一定ではないものは共同配送に向きません。
まとめ
共同配送はトラックドライバーの人手不足に対応し、コスト削減、環境負荷の抑制に役立つ配送システムです。連携する企業を見つけ、最適なシステムを構築するなどの念入りな準備をしっかり行えば、それだけのメリットがあります。
逆に言うと、多くのメリットを実現させるためには、念入りな準備を行って共同配送を導入する必要があります。