物流業界には、自社で製品の販売から配送を行う企業も多く存在しています。製品の製造・販売に注力したい場合や配送業務の質の向上を目指している企業にとっては物流アウトソーシングを利用するという選択肢を検討してみる価値があります。
今回の記事では、物流アウトソーシングの仕組みや説明、定形系物流サービスとカスタム系物流サービスの違い、物流アウトソーシングのメリット・デメリットを紹介したうえで、業者選びのポイントについて解説していきます。配送業務の仕組みの理解は、企業の主軸とする業務の効率化にもつながりますので是非最後までご覧ください。
物流アウトソーシングとは
物流アウトソーシングは、その名の通り企業の配送業務などの「物流」に関わる業務を、配送業を専門として行う業者に「アウトソーシング」することを指します。物流アウトソーシングと自社物流の違い、物流アウトソーシングが必要とされる理由や詳しい仕組みについて見ていきましょう。
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自社物流と物流アウトソーシング
物流業務を外部の業者へ委託する物流アウトソーシングの対義語として、自社物流という言葉があります。自社物流とは、商品の入荷・検品、在庫管理、ピッキング・梱包、出荷といった物流業務やそれに付帯する業務を自社内で行うことを言います。自社物流の場合、商品を保管する倉庫や運搬の際のトラック、それらを管理・利用する社員の人件費といった固定費用が継続的に発生します。そのため、設備費用が十分に確保できない企業は、業績状況によって大きな負担を抱えることも考えられます。
一方、物流アウトソーシングでは、物流業務を専門業者が代行してくれることによって、設備にかかる初期投資額が比較的小さいだけでなく、主軸の業務に集中して資本を投下できるため業務効率の向上が期待できます。
物流アウトソーシングが必要とされる理由
近年、インターネット物販産業の成長は著しく、それに伴い物流業界への需要の高まりに拍車がかかっています。2022年の日本国内での消費者向け電子商取引の市場規模は227,449円に拡大し、前年比9.91%増加しています。
引用:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」
https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002.html
EC事業の市場規模拡大により、物販を行う企業や個人にとって物流業務への負担は大きくなっていきました。このような背景から、物流アウトソーシングを導入する動きが見られ始めたのです。
物流アウトソーシングでできること
一般的に、物流アウトソーシングでできることとして、商品の搬入や管理、配送の代行があげられます。しかし、最近の物流アウトソーシングを行う業者は、EC関連事業者が依頼者ならば注文データ処理業務も行ったり、イレギュラーな顧客対応などのバックオフィス業務の委託を受けたりするケースが増えてきています。複雑多岐にわたる物流業務の中で、それぞれの企業に応じた物流アウトソーシングの在り方が選択できる環境が整いつつあるのです。
引用:オープンメディアブログ「027 倉庫業務の流れを知ろう」
https://openmedia.jp/blog/?p=845
物流アウトソーシングの種類
物流アウトソーシングには、定額系物流サービスとカスタム系物流サービスがあります。定形系物流サービスとカスタム系物流サービスの違いを解説していきます。
定額系物流サービスは、サービスの内容ごとにあらかじめ金額設定が行われているため、事前準備の手間が省けて導入しやすいという特徴があります。一方、カスタム系物流サービスでは、自社の希望するサービスをカスタムしてくれます。そのため、業務効率の計画的な向上が期待できますが、十分な事前準備が必要であり導入スピードが遅い点と費用面の複雑化を考慮した上で導入を検討する必要があります。
物流アウトソーシングのメリット
ここまで、物流アウトソーシングの仕組みや種類について解説していきました。ここからは、物流アウトソーシングのメリットについて詳しく見ていきましょう。
コストの削減ができる
物流業務を行うときにかかるコストとしては、倉庫にかかる費用、人件費、梱包資材費用、配送料金の4つに分類できます。物流アウトソーシングを行うことによって、倉庫の賃料や電気代等のランニングコスト、管理業務を行う人件費といった固定費を削減することが可能です。また、物流アウトソーシングによって、これまで固定費としてきた物流業務を変動費として捉えることができるので、企業のリソース低下による固定費圧迫のリスクを回避することにもつながります。
物流業務の質が向上する
物流業務をプロの配送業者に委託することで品質向上が期待できます。自社内で物流業務を対応していると、業務件数の増加によって人的ミスが増えてきます。経験豊富な専門業者であれば、そうした物流部門でのトラブル件数が少ないだけでなく、迅速かつ丁寧なトラブル対応も可能です。物流業務の品質向上は、結果としてリピート顧客獲得につながる可能性が高いでしょう。
業務効率の改善
自社物流から物流アウトソーシングに切り替えることで、最大出荷可能数の増加と人的資本の集中投下が可能となります。自社物流では、商品の製造効率が改善されたとしても物流業務がスムーズに行われないと、購入者の手元に届くまでに時間がかかってしまったり、在庫管理が正常に行われず、欠品・キャンセルといった問題を引き起こしてしまう場合があります。
物流アウトソーシングでは、物流業務に従事していた人材を製造部門に回すことも可能です。このように、物流業務による制約を気にせずに人的資本を製造・販売に注力できるため、企業自体の業務効率向上が期待できるのです。
物流アウトソーシングのデメリット
ここまで、物流アウトソーシングのメリットについて解説してきました。一方で、まだまだ物流アウトソーシングの導入に踏み切れていない企業が多いのも事実として存在しています。物流アウトソーシングのデメリットについても詳しく見ていきましょう。
物流事業で他社との差別化が図りにくい
自社で物流業務を行っている企業の中には、物流事業での差別化を目指している企業も多いでしょう。代表的な例は、梱包の中にメッセージカードを同封している場合です。競合他社が多い製品を販売する企業にとって物流業務の丁寧さは他社との差別化を図る好機であり、サービス内容が標準化されてしまう物流アウトソーシングは、個別対応の難しさからデメリットであると言えるでしょう。
下請け・孫請け問題
物流業界には、物流アウトソーシングを受注する業者のほかに、実際に業務を行う下請け・孫請け企業が存在します。物流アウトソーシングによって行われた配送事業において、顧客からのクレームや荷崩れなどの問題が生まれたときに、責任の所在の判断が難しいというデメリットがあります。業務を外注するということは、同時に当事者意識をもった業務を放棄することにもつながりかねないということを認識して、業者選びは慎重に行いましょう。
業者選びが難しい
近年のEC事業の市場規模拡大に伴って、物流アウトソーシングを行う業者数は増加し、サービス内容も豊富になってきています。どの業者に委託するのが自社にとってメリットが大きいのかという判断が難しくなっているのです。業者選びのポイントはこの記事の以下から紹介していきます。
業者選びのポイント
ここまで、物流アウトソーシングのメリット・デメリットについて解説してきました。物流アウトソーシングのデメリットの多くは委託する業者の選定ミスから生まれてしまうものです。ここからは、信頼できる業者選びのポイントを紹介していきます。
提供するサービス内容の範囲を認知する
物流アウトソーシングの委託先企業のサービス内容を正確に理解する必要があります。なぜなら、自社で行っている物流業務の問題点を洗い出して、その問題点を的確に解決してくれるサービスを展開する業者に依頼することが重要だからです。物流アウトソーシングによって業務の効率化を図るだけでなく、コスト面でもメリットを享受できるように委託先のサービス内容を把握しましょう。
満足できる見積もり内容
見積もりが届いたときに確認すべきポイントは、「どの業務が入っていてどの業務は対応外なのか」という点です。商品の入荷・検品、在庫管理、ピッキング・梱包、出荷といった物流業務のほかに顧客対応や注文データ処理といった個別の業務のどこまでを委託できるのかを線引きしておくことで後のトラブルへと発展しにくいです。
また、物流業務に必要な費用として倉庫にかかる費用、人件費、梱包資材費用、配送料金の4つがありますが、これらを越えてしまうような見積もりは自社にとってメリットは少ないでしょう。業務内容、費用面の両方に納得いく見積もりを出してくれた業者に依頼することをおすすめします。
フォロー体制の整備
業務を委託すると、日常的に行っていた自社での物流業務のほとんどが委託先の業者対応になります。契約締結前に日々の業務のフォローやトラブル発生時の対応などのサポート体制を確認しておく必要があるでしょう。
物流アウトソーシングに関しての実績や、過去のトラブルにどのように対応したのかを聞いてみることが、信頼できる業者を見極めるためのポイントになるでしょう。
まとめ
EC事業の市場規模拡大に伴い、物流業務のアウトソーシングは加速していくと考えられます。物流アウトソーシングによるメリットは、固定費等のコスト削減ができること、プロの業者に業務委託することによる物流業務の品質の向上、人的資本の集中投下により業務効率が改善されることでした。一方で、デメリットとしては、物流事業で他社との差別化ができないこと、下請け・孫請けによる責任の所在が不明確となること、業者選びが難しいことがあげられました。
デメリットとしてあげた点のほとんどは、委託する側の学習や業者選びの際のポイントを抑えることで対応が可能です。自社にとってメリットが大きいのならば、積極的に物流アウトソーシングを活用して業務効率化を推進していきましょう。