荷物の輸送を行う運送会社は、トラックのCO2排出量の削減など、日頃の業務から会社として環境問題に配慮する社会的責任があります。
しかし、環境に配慮して業務を行っている運送会社を外部が判断するのは難しく、具体的にどのような取り組みをしたら良いのか悩んでいる事業者も少なくありません。
そこで、環境保全を目的とした取り組みを行っている運送会社に対する認証制度が「グリーン経営認証制度」です。
この記事では、運送会社のグリーン経営についての基礎知識と、メリットデメリット、補助金などを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
運送会社のグリーン経営とは
環境保全を目的とした取り組みを行っている運送会社に対する認証制度である「グリーン経営認証」は、公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団(通称:エコモ)が運営、管理する制度です。
国土交通省とエコモが発行する「グリーン経営推進マニュアル」に沿った環境保全の取り組みを行っていると認定された事業者のみが、グリーン経営を取得することができます。
また、事業者はただ取り組みを行うだけでなく、自主的な目標設定を行った上で、その結果を分析し、評価し改善するというPDCAサイクルを実施する必要があります。
グリーン経営認証制度は、運送業の環境対策の有効な取り組みとして国からも評価されており、具体的な取り組み内容としては以下が挙げられます。
- エコドライブ(環境負荷の軽減に配慮した自動車を使用すること)
- 低公害車の導入(自動車から出る大気汚染物質の排出量が少ない、または排出されない自動車)
- 廃車や廃棄物の管理
※引用:交通エコロジー・モビリティ財団|グリーン経営認証取得
※引用:国土交通省|運輸事業者のグリーン経営推進について
グリーン経営認証を取得する目的
グリーン経営認証制度は、運輸事業者の環境保全への取り組みを推進することで、環境貢献型経営(グリーン経営)を行う運輸事業者を増やし、環境問題の改善を目的としています。
対象となる運輸事業者は、トラック、バス、タクシー事業、旅客船、港湾運送、倉庫業など業務上、車や船を使用するため、CO2排出が避けられない事業者です。
グリーン経営認証は、業種ごとに取り組むべき内容を具体的に明記しており、例えばトラックで配送する運送会社では、CO2排出量を減らすためにできることや、エコドライブの実施、リサイクルの促進、トラックの点検整備など、自社でやるべきことがわかりやすいのが特徴です。
これらの取り組み内容が記載されたチェックリストも用意されているため、グリーン経営認証の取得を検討している事業者も目指しやすい制度といえます。
グリーン経営認証を取得する6つの流れ
グリーン経営認証の取得は、申請書類を提出したら良いという訳ではなく、基準を満たすための取り組みが必須となります。
ここでは、グリーン経営認証を取得するまでの流れを詳しく解説します。
「グリーン経営推進マニュアル」をダウンロードする
まずはグリーン経営の公式サイトから、「グリーン経営推進マニュアル 購入申込書」をダウンロードします。
業種別にマニュアルが用意されているので、自社の業種のマニュアルをFAXで申し込んでください。
グリーン経営認証の取得を急ぐ場合や、冊子が必要ない場合はPDFでマニュアルを受け取ることも可能なため、エコモ財団に問い合わせましょう。
「グリーン経営推進チェックリスト」で認証基準を確認する
マニュアルは申込んでから5〜10日ほどで、基本的にメール便で届きます。1冊あたり510円で、郵便振替用紙がマニュアルと同封されますので、届き次第振り込みましょう。
マニュアルが届いたら、チェックリストを確認しながら自社がグリーン経営認証基準の取り組みができているか把握します。
もし、取り組みがされていない項目があった場合は、取り組み目標や行動計画を立てて、社内で実施する必要があります。
運送業のチェックリストの主な内容は、以下を参考にしてください。
- 環境保全のための仕組み・体制の整備
- エコドライブの実施
- 低公害車の導入
- 自動車の点検・整備
- 廃車・廃棄物の抽出抑制、適正処理及びリサイクルの推進
- 管理部門(事務所)における環境保全の推進
グリーン経営認証申請書類とチェックリストを作成・提出
チェックリストの項目を全てクリアしていると判断したら、専用の申請書類を作成してエコモ財団に提出します。
申請書類は業種によって異なるため、自社の業種用のマニュアルに沿って書類の作成を行いましょう。
エコモ財団による審査・認証費用の支払い
申請書類をエコモ財団に提出したあとは、エコモ財団から審査を行う日時や費用などの詳細が事業所に送られてきます。
審査当日は、エコモ財団の担当者が直接事業所に訪問して、チェックリストの項目が実際に取り組まれているか確認するための実施調査が行われます。
審査に要する時間は、一つの事業所につき約2〜5時間ほどです。
合格した場合
審査に合格した場合は、審査料金と登録料金を振り込んだあとに、グリーン経営認証の登録証が発行されます。
新規で認証を取得した場合は、登録証の他に「グリーン経営ロゴマークサンプル」と「登録証とロゴマークの取扱要領」が送られてきますので、内容が揃っているか確認しましょう。
登録証が発行される期間は、審査の日から約3〜4週間かかるようです。
不合格の場合
審査の結果、不合格になってしまった場合でも審査料は振り込む必要があります。
また、エコモ財団から指摘された項目を審査日から60日以内に改善し、そのことを証明する資料を提出することで合格判定を得ることが可能です。
引用:運送業版「グリーン経営認証取得の手引き」
グリーン経営認証登録の発表
審査に合格して、必要な費用を振り込み登録証が送付されたあとは、グリーン経営認証を取得した事業者として、エコモ財団の公式サイトに掲載されます。
参考:エコモ財団公式サイト|グリーン経営認証登録された環境にやさしい運輸事業者数・事業者一覧
運送会社がグリーン経営認証を取得するメリット
グリーン経営認証を取得することは、環境保全につながるだけでなく事業者にも多くのメリットがあるため、グリーン経営認証を取得する運送会社は年々増えています。
ここでは、運送会社がグリーン経営認証を取得するメリットについて詳しく解説します。
低金利融資制度が受けられるため、資金調達がしやすくなる
グリーン経営認証を取得した事業者は、銀行や自治体の低金利融資制度が利用できます。
低金利で融資が受けられれば、資金調達もしやすくなるため、事業拡大をする場合にも役立つでしょう。
また、低金利融資制度以外にも保険料割引制度など、グリーン経営認証を取得した事業所しか受けられない優遇措置があるので、エコモ財団の公式サイトにて確認しましょう。
認証料金助成制度が受けられる
グリーン経営認証の取得には、マニュアル購入費の他に審査料金や登録料金などで15万5,000円がかかります。
しかし、その費用の一部を助成してくれる制度が用意されているため、経費を抑えることが可能です。
ただし助成額は、自治体やトラック協会によって異なり、自治体によっては助成制度が用意されていないところもあるため、事業所がある自治体の公式サイトなどで確認しましょう。
トラックの燃費が向上し、コスト削減と環境改善が目指せる
運送会社がグリーン経営認証を取得するためには、エコドライブの実施や低公害車の導入、トラックの点検整備など、環境保全の取り組みを行う必要があります。
それらの取り組みは環境問題の改善につながるだけでなく、トラックの燃費向上にもなるため、結果としてコストの削減が目指せるのです。
運送会社がグリーン経営認証を取得するデメリット
グリーン経営認証の取得は、事業者にとって多くのメリットがありますが、デメリットもあります。
グリーン経営認証の取得には費用がかかる
グリーン経営認証の取得には、エコモ財団による審査料や審査員の交通費、宿泊が必要な場合は宿泊費、マニュアル代などあわせて15万5,000円という費用が必要になります。
この費用は、一つの事業所単位なので、複数の事業所で申請を行う場合は、事業所の数だけ費用が発生します。
さらに、自社でグリーン経営認証の取得を目指すのが難しい場合は、コンサルタントに依頼する会社も多く、その場合はコンサル費用もかかるため助成金などを上手く活用してコストを抑えると良いでしょう。
グリーン経営認証の取得にかかる労力と時間
グリーン経営認証を取得するためには、環境保全の取り組みを会社全体で実施する必要があるため、新しく認証取得を目指す際は、時間と労力がかかります。
取り組みの内容は、エコドライブの実施や低公害車の導入、トラックの点検整備などが必須なので、運営サイドだけでなくドライバーの協力と理解も必要です。
また、取り組みを実施して終わりではなく、その効果を定期的にチェックして評価を行い、改善するというPDCAを回し続けることが重要になります。
グリーン経営認証を所得すると、自社の信頼性アップと環境保全に貢献できる!
トラックや船などを使用して輸送を行う運輸事業者は、CO2排出が避けられないため環境保全の意識をもち、取り組みを行うことに関して、社会的責任があります。
グリーン経営認証を取得することは、環境に優しい経営を行っていることをアピールできるだけでなく、低金利融資制度といった優遇も受けられ、資金調達の面や、コスト削減にも繋がります。
認証取得には費用がかかりますが、自治体やトラック協会によって助成金制度も用意されているので、上手く活用しながらグリーン経営を行いましょう。