コラム

運送業の就業規則を作成する時のポイント|作成義務が生じる条件や必要な理由も解説

目次

運送業は業務的に長時間労働が多いため、ドライバーとの間で残業代や労働環境に関するトラブルが少なくありません。

「従業員とトラブルになった時に会社を守ってくれる就業規則を作りたい」「2024年の法改正に合わせて就業規則を更新したい」と考えている運送業の経営者の方や、管理業務の担当者の方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、運送業の就業規則を作成するポイントや、作成義務がある会社の条件、なぜ就業規則が必要なのかといった理由も解説しますので、就業規則を作成する際の参考にしてください。

就業規則とは

「就業規則」とは、労働者の賃金や労働時間といった労働条件に関することや職場のルールなどについて定めた規則のことをいいます。

企業と従業員の間で共通のルールを決めておくことで、双方が働きやすい職場づくりと、トラブル防止に役立ちます。

常時10人以上の従業員がいる企業は、法律で就業規則の作成と労働基準監督署長への届出が義務付けられています。

しかし、従業員が10人以下の小さな会社の場合でも、従業員とのトラブル防止のために就業規則を作成しておいた方が安心です。

※参考:全日本トラック協会「わかりやすいモデル就業規則

就業規則に記載する3つの事項内容

就業規則は、以下の3つの記載事項によって成り立っています。

・絶対的記載事項

・相対的記載事項

・任意的記載事項

項目によって必ず記載が必要なものと任意のものがありますので、それぞれ以下で詳しく解説します。

必ず記載が必要「絶対的記載事項」

「絶対的記載事項」は、就業規則に必ず記載しなければいけない項目です。記載する内容は労働の基本となる以下の3種類です。

・労働時間

・賃金

・退職に関すること

絶対的記載事項には、労働時間、賃金、退職する際の手続きや解雇されるケースなど、働く際に基本となる情報が記載されます。

大まかな情報ではなく、以下の表にあるように詳細を記載することで、トラブル防止に繋がります。

記載する項目・種類 詳細
労働時間 ・始業及び就業時刻

・休憩時間

・休日

・交替制で勤務させる場合の就業時転換に関する事項

賃金 ・賃金の決定

・賃金の計算及び支払いの方法

・賃金の締切りと支払い時期

・昇給に関する事項

※退職手当及び臨時に支払われる賃金は除く

退職に関すること ・退職に関する事項

・解雇事由

 

制度を設ける際に必要「相対的記載事項」

「相対的記載事項」は、退職手当やボーナス等の賞与、職業訓練など企業が独自に制度を設ける際に記載する必要がある項目です。

例えば、無事故無違反や交通ルールに関する賞与制度を設ける場合は「1年間無事故無違反のドライバーには、5万円の賞与がある」など明確に記載しておく必要があります。

よくある主な項目と詳細は以下の通りです。

記載する項目・種類 詳細
退職手当に関すること ・退職する際に退職金が出るのか

・退職金の受給条件

業務に関係する費用について ・業務時間内の食費負担

・業務に関係する雑費の負担

表彰制度、賞与に関すること ・表彰制度について

・臨時の賃金や賞与の条件や金額

職業訓練について ・職業訓練の期間や訓練期間の賃金など
その他 ・災害補償、業務外の傷病扶助に関すること

・その他全ての労働者に適用される事項

 

会社が任意で記載する項目「任意的記載事項」

「任意的記載事項」は、その名の通り会社の判断で記載するか決めることができる任意の項目です。

会社の理念や従業員の心得など会社独自の規定を記載することが一般的です。特に、運送業の場合はドライバーに向けた「運転中のルール」などを書いておくと良いでしょう。

また、業務で使用するトラックや車を損傷させた場合の対処法や、修理費の負担についても明確にしておくとトラブル防止につながるため、安心です。

従業員が10人以上いる場合は、就業規則の作成義務がある

従業員が10人以上いる場合は、就業規則の作成と労働基準監督署長への届出が労働基準法で義務付けられています。

従業員には、パートやアルバイトとして雇用している人や臨時職員なども含まれるため、仮に、正社員が5人しかいなくてもアルバイトを5人以上雇っている場合は、就業規則の作成義務が生じます。

従業員の数え方は会社全体ではなく、事業所ごとの単位です。

つまり、会社全体の従業員が10人を超えていても、各事業所で働く従業員が常時10人未満という場合は、就業規則の作成義務はありません。

仮に就業規則の作成義務がなくても、就業規則は作成しておいた方が従業員とのトラブル防止になるため安心です。

引用:e-eov 法令検索労働基準法 第89条

就業規則は従業員に周知する義務がある

就業規則を作成したら、従業員に周知しなければならないと法律で定められています。

また、周知する方法についても決められているため、以下の点に注意しましょう。

・就業規則を作成する際は、従業員の代表者と意見を交わして作成する

・従業員が常に就業規則を閲覧できる状態にしておく

上記の2点が守られていない場合は、就業規則の効力が認められない可能性もあります。

就業規則を作成したら、従業員に直接配布したり、会社の公式サイトでみれるようにするなどして、いつでも従業員が就業規則を確認できる状況をつくりましょう。

運送業の就業規則を作成するときのポイント

運送業は、36協定により他の業種とは労働時間の規制が異なります。

また、車両の管理や、交通ルールの遵守についても就業規則に記載する必要があるため、就業規則を作成するときは、他の業種にはないポイントがあります。

厚生労働省では、簡単に就業規則が作成できる無料ツールを公式サイト上で提供していますが、それを利用する際も運送業独自の記載事項を意識することが重要です。

参考:厚生労働省就業規則作成支援ツールについて

他の業種とは労働時間の規制が異なる|2024年の法改正も考慮

労働基準法では、「労働時間は1日8時間、週40時間まで」と定められており、それを超えてしまう場合は、会社と従業員の間で「時間外労働及び休日労働に関する労使協定」という協定(36協定)を結ぶ必要があります。

しかし、運送業の特性上、荷物の配送や輸送には予測不可能な要素が多く労働基準法で決められている労働時間を守ることが難しいため、運送業のドライバー職に限り、例外として時間外労働の上限規制が猶予されています。

そのため、運送業で就業規則を作成する場合は、労働時間の記載について他の業種と異なるので注意が必要です。

また、法改正により2024年4月1日から、運送業のドライバーも時間外労働の上限が適用されることになり、年間の労働時間の上限が「960時間」になってしまうため、新しい法律に沿った就業規則を作成しましょう。

運送業の36協定と2024年問題については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

運送業の36協定を徹底解説|ドライバーの残業上限は2024年4月1日以降どう変わる?

運行管理や車両管理についても記載しておく

運送業の就業規則には、ドライバーの運転時間を明確にする「運行管理」に関する項目と、「車両管理」に関する2つの項目を記載する必要があります。

国土交通省やトラック協会の監査があるため、運転管理と車両管理に関する記載は明確に書いておくようにしましょう。

運行管理と車両管理の記載する内容の例を、以下の表にまとめました。

運行管理 ドライバーの拘束時間

・休憩期間および運転時間(2人乗車の場合も)

・休息期間の配分

・連続運転時間など

車両管理 ・安全運転管理者の選任について

・車両管理台帳の作成、記入

・運転者台帳の作成、記入

・安全運転の確保

・車両の保守点検及び整備 、保険への加入について

・社有車の私的使用について

・マイカーの業務使用 や事故時の対応についてなど

 

交通違反や事故に対する懲罰規定・服務規律も必要

業務をおこなう上で従業員に守ってもらう服務規律や、交通違反や事故を起こした場合の懲罰規定についても、就業規則に記載しておくと良いでしょう。

記載する際は、具体的な詳細を書いておく必要があります。

例えば「荷積みや荷降ろし先での身だしなみや服装」「業務中、業務外問わず交通ルールを遵守する。違反した場合は懲罰対象となる。」「社用車両内は禁煙とする。(電子タバコも含む)」などです。

就業規則の具体的な記載例は、全日本トラック協会が発行している「わかりやすいモデル就業規則」に載っているため参考にしてください。

※参考:全日本トラック協会「わかりやすいモデル就業規則

【運送業向け】就業規則が必要な理由

従業員が10人未満の会社には、就業規則の作成義務はありません。

しかし、従業員とのトラブル防止や、何かあった時に会社と従業員を守るためにも、就業規則は作成しておいた方が安心です。

拘束時間が長くなる可能性が高いから

運送業の業務は配送や輸送が主なため、どうしても長時間労働になってしまい、拘束時間も長くなる傾向があります。

その結果、ドライバーと会社の間で残業代をめぐるトラブルに発展することも少なくありません。

それを防止するためにも、就業規則にはドライバーの休憩時間を含む労働時間の詳細と、残業代についてしっかり記載しておき、さらに口頭でも説明することが大切です。

会社の秩序を守れるから

会社を守るためにも就業規則は大切です。もし、従業員が社用のトラックで煽り運転や人身事故を起こしてしまった場合、会社に責任が問われ信頼が下がってしまいます。

万が一、それが原因で倒産という事態になってしまった場合、他の従業員も職を失ってしまうことになるのです。

また、労働者は労働基準法で守られているため、業務態度に問題があっても簡単に減給や解雇はできず、逆に不当解雇で会社が訴えられてしまう可能性もあります。

そういった事態になるのを防ぐためにも、就業規則に懲戒規定を含めて、会社のルールをしっかり決めておき、従業員と共有した上で、日頃から指導し会社の秩序を守ることが大切です。

懲戒規定とは

懲戒規定とは、従業員が会社の秩序を乱したり、会社の信頼低下につながるような行為をおこなった場合に、処分するための規約のことです。

従業員に非があったとしても、就業規則に懲戒規定が記載されていないと処分することができないため、就業規則を作成する際は懲戒規定も盛り込むようにしましょう。

運送業の就業規則は、労働時間や運行管理についてもしっかり記載しよう!

従業員が10人以上いる会社は、就業規則の作成義務が労働基準法で定められており、管轄の労働基準監督署に届出をしなければいけません。

また、就業規則は作成するだけでなく、従業員に周知することで効力が得られます。

従業員が10人未満の会社には、就業規則の作成義務はありませんが、会社と従業員を守るためにも就業規則があると安心です。

運送業は労働時間など他の業種と異なる点も多いため、この記事で紹介した作成のポイントと、2024年の法改定を反映させて、自社にあった就業規則を作成してください。

松井 涼

松井 涼

運送業に特化した求人サイト「ドラピタ」の制作スタッフとして取材・撮影・ライティング・採用コンサルなど、400社以上の採用支援の経験を経て、現在ではメディアの改修・運営・マーケティングの専属に。現在は、運送業の採用促進のためのツール、商品企画なども行い、運送業の人材不足の改善に多角的観点から注力している。
松井 涼

松井 涼

運送業に特化した求人サイト「ドラピタ」の制作スタッフとして取材・撮影・ライティング・採用コンサルなど、400社以上の採用支援の経験を経て、現在ではメディアの改修・運営・マーケティングの専属に。現在は、運送業の採用促進のためのツール、商品企画なども行い、運送業の人材不足の改善に多角的観点から注力している。